第一章 運命の邂逅(2)
「どうしよう、結局連れ帰ってきてしまったぞ」
いやでもこれは人助けであってけして犯罪行為ではないんだ、と必死に自分を納得させる黒神少年。とりあえずは自分のベッドに少女を寝かせたものの、どうしていいのか分からないらしい。
少女はプリッツ柄のスカートに紺色のブレザーとごく普通の制服ではあったが、その容姿は普通ではなかった。
逆三角の顔、長いまつげ、綺麗な青色のストレートのロングヘアー。触ると解けてしまいそうな柔肌。恐らく黒神と同い年だろう。
「美少女ってやつだよな、これ。何であんなところに倒れてたんだ?」
さらに不思議なのが、彼女の体にはデバイスが見当たらないということだ。
エデンの住人は、中学生になるとデバイスが支給される。その形状は様々であり、個人の好みに出来る。黒神も、能力は使えないが、スマートフォンの形のデバイスを持っている。
超能力発現のアシストとなるデバイスは、エデンにいる以上必需品。
もちろん、友人との連絡に使えたり、インターネットを開けたりと携帯端末と同じような機能を利用できる。
「確か、服の中に隠してる奴もいるっけ。んー、調べるわけには……いかないよなぁ。でも、もしデバイスを持っていないんだとしたら……」
外界の住人、という可能性もあるわけだ。
「だとしたら、どうやって入ったんだ?」
エデンは、外界から隔離されている。黒神自身は見たこと無いが、特殊な壁で囲まれているらしい。
「ん……」
「お、おおぉぉぉ!?」
少女の口から漏れた艶やかな声に、黒神は飛び跳ねる。
少女が目を開く。その瞳は大きく、髪の色と同じく綺麗なブルーだった。
「ここ、は……?」
ゆっくりと体を起こし、少女は辺りを見渡す。そして、その視界に黒神を捕らえた瞬間――
「きゃぁぁぁぁっ!! へ、変態!? 誘拐犯!? それとも、強姦魔!?」
「ま、待て待て! 俺は道端で倒れてるお前をだな!!」
あらぬ誤解をかけられ、黒神は必死に弁明をする。
「か、介抱するふりして私の体を好き勝手にするつもりね!!」
「ちょっと待て、違うって! まだ何もしてないし!!」
「まだ……? ってことは、私が目覚めなければ――」
「だぁぁぁ!! 余計にややこしくなってる!?」
それから、少女の誤解を解くまでに数時間を要した。




