第三章 死力の再戦(3)
数分後、赤城が部屋に入ってきた。
「こっちは準備できたぞ……って、なに難しい顔してんだよ」
赤城の手にはノートパソコンと、彼の携帯型デバイスが握られていた。
「ん、ああ……ちょっとな。それでデバイスは分かるけどそのパソコンは?」
「まーまー、見てろって。ほら、デバイスとパソコンは同機できるだろ」
そう言いながら、彼は床にパソコンを置き自身のデバイスを接続した。黒神もその画面を見るために、赤城の隣へ座る。
「敵はエデンの中にいるだろうな。それに、潜伏してるならホープの可能性が高い」
「どうしてそう言いきれるんだ?」
「神原って奴はテレポートを使えないんだろ? だったら、いくら強くても女の子1人抱えて逃げるならそう遠くへは行けないはずだ。警察が来る前に逃げた辺り、今は見つかりたくなかったんだろうからな」
「だとしても、テレポートを使える仲間がエデン内にいたとしたら?」
「これ、見てみろよ」
そう言って、赤城はあるネット記事の画面を出した。そこにあったのは、外界についての記事だ。
『エデン内から派遣された能力者が、エデンに反対する集団を攻撃している』。恐らく、その集団は『楽園解放』のことだろう。
「ま、この記事は非公式だからすぐに削除されたけどな」
「だったら、なんで持ってるんだよ」
「保存しといたんだよ。外界についての情報なんか滅多に入らないからな」
「けど、これが『楽園解放』のことだとは……」
「その辺は賭けだ。これで『楽園解放』の機能が弱ってるかもしれない……推測の域から出ることは無いからな」
もしそうだとしたら、テレポートを使う能力者は外界に残っているはず。今のところ神原の存在は気づかれていない。つまり、優先すべきは外界にいる仲間の支援である。
「逃げるためにはテレポートが便利だからな」
テレポートを使えるメンバーはいない。ということは、神原は遠くへは行っていない。しかも、神原以外のメンバーがいない可能性だってある。
「んじゃ、とっとと場所の特定をしないとな」
赤城は再びパソコンを操作する。
「ホープの中にいるなら、ここが最有力だ」
彼が示したのは、エデンの『裏』とも言える部分。廃ビルが集まっている場所で、警察も殆ど立ち寄らない場所だ。だから、そこで戦闘を行う能力者もいる。
それが、『カントリー』と呼ばれる町だ。
「エデンに詳しくない奴から見ても、カントリーは絶好の隠れ家だ」
「焔……お前、凄いな」
「親友の危機だからな!」
赤城は二カッと笑ったが、そういう問題ではないと黒神は思う。
「とにかく、そこに行こう!」
「オーケー、終夜お前のデバイスも貸してくれ」
赤城は自分のデバイスと終夜のデバイスにカントリーのデータを入れていく。
(神原……)
そして、2人は部屋を出た。
「なあ終夜」
「ん?」
「カントリーは『裏』の能力者集団の基地も多いから気をつけろよ。間違ったビルに入ったら――」
「そういうことを今言うなよ……」




