第四章 明日ヘト繋グタメニ(2)
自分の話を信じ、『黒』と協力するかどうかは各個人の判断に任せると闇野は言った。その後、彼は赤城と氷川、そして北条だけを連れて会議室を後にする。4人だけで話がしたいと言ったので、赤城は自分の部屋で話すことを提案した。
目立つものはあまりなく、生活するのに最低限必要と考えられるものしか無い部屋に4人の人間が入った。彼らは部屋の中央にある四角の木製テーブルを囲むようにして座った。
赤城は部屋にあった私服に着替た。流石にあの服装のままとはいかないだろう。
闇野が右手で頬杖をつきながら、赤城の顔をまじまじと見つめる。
「聞きてーことが山ほどある、って顔してやがるな。そーだな、何から聞きたい?」
確かに、聞かなければならないことが幾つもある。まだ時間的にも余裕があるのか、闇野は赤城の出方を待っていた。
掌をテーブルの上に置き、赤城は少しだけ身を乗り出した。
「どうして、俺たちなんだ」
「あー、もーそこに行くか。まーいい……結論から言うと、貴様らが選ばれた者だからだ」
「選ばれた者……?」
そういえば、『黒』の本部でもそのようなことを言っていた覚えがある。赤城は首を傾げながら、その時のことを思い出していた。
「鍵、とでも言うべきだろーな。貴様らが世界大戦を阻止する鍵となる」
「ちょ、ちょっと待ってくれ! リーダーが大戦を起こそうとしてたんだろ。だったら、あんたが1番の鍵なんじゃないのか?」
ふん、と闇野は鼻で笑った。そして、とある人物の名を出す。その名に、赤城はおろか氷川も驚いたような表情をみせた。
「黒神終夜。特に貴様はこいつと関係が深いだろ」
つまり、赤城が鍵たる所以は彼との関わりがあったからである。そして、そんな赤城と親密になったのが氷川。簡単な話だ。
「終夜……だと?」
「厳密に言えば、もう一段階ある。黒神終夜は、朝影光と関わった。それが全ての始まりだ」
外界の人間で、しかも『楽園解放』という反エデン組織に所属していた朝影。彼女と接触したのが黒神だった。そして、2人を巡る事件に関わり、且つ『裏』に来たのが赤城。
連鎖の果ては氷川。これが、2人が鍵となる理由だ。
「他に何かあるか?」
闇野が問うと、今度は氷川が北条に対して質問をぶつけた。背筋を伸ばして正座している2人の会話は、格式ばった堅い話にも思える。
「重はどうして『裏』に? 私がどれだけ心配したか……」
北条は『裏』に行っただけではなく、同じく『裏』に踏み込もうとした氷川を止めようとした。今でも氷川が『裏』にいることを快くは思っていないようだ。その意図とは、何だったのか。
「私は、闇野さんに誘われてこちらに来たのです。彼から、『貴様の親友を守ることが出来る』と聞いて。まあ、思いっきり騙されましたけど」
「騙したわけじゃねーよ。ただ、貴様が思ってる『守る』とは形が違ったってだけだ」
「……私を、守るため? 重……」
「何も言わなかったことは、素直に謝りますわ。でも、決して葵を悲しませようと思ってたわけじゃないことだけは信じてくださいまし」
真剣な眼差しで氷川を見つめる北条に対し、彼女は微笑を浮かべて、
「ええ、もちろんです。ありがとう、重」
「……葵にありがとうと言われるだなんて、思ってもみませんでしたわ」
「どういう意味ですかそれ」
「いえ、まあ……良かったですわね、あの殿方と出会えて」
「どういう意味ですかそれ!!」




