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第四章  信じるべきもの、その代償(3)

 救出活動開始から約3時間後、何とか雨が降り出す前に活動が完了した。途中からは消防や警察、復帰した『楽園解放』が加わったことで作業のスピードが格段に上がったのだ。


 奇跡的に死者は出なかった。生徒や教員、そしてランク戦用施設の従業員、全員が生存。ただし、重傷者は多く、今も何台もの救急車が慌しく出入りを繰り返している。


「やっぱり、ランク戦の施設の人たちが動けないのは痛いか……」


 雨が降ってきたために木陰へと移動した藤原は、小さな声で言った。彼の近くには歓談部のメンバーが集まっている。もちろん、早苗も一緒だ。


「みんな、よく頑張ったね。部長としてとても嬉しいよ」


 メンバーたちがそれぞれ笑顔や照れ顔を見せると、藤原はところで、と話を続けた。


「終ちゃんはどこに行ったのかな?」


 今回の騒動の中心にいる人物、黒神終夜が見当たらない。ついでに、彼と同棲している朝影光もいない。とはいえ、彼女に関しては別の木陰にいるだけで、藤原の視界の外にいるわけではない。


「黒神君なら、『管理者』に着いていったよっ」


 早苗が元気に手を挙げながら答えた。何だかんだ初めて見る早苗の姿に藤原は戸惑いながら、


「ええと、そっちが早苗ちゃんか。ややこしいな……それにしても、『管理者』か。タイミングが良すぎる。いや、この事件をいい機会だと踏んだのか……? まあ、相手が『管理者』なら終ちゃんは大丈夫だ」


 その言葉に、他のメンバーたちは安堵の表情を浮かべていた。彼らも姿が見えない黒神を心配していたのだろう。


 だが、ただ1人。

 早織だけが難しそうな顔をしていた。


「とにかく、今はしっかり休むんだ。これから、あいつらがもう一度襲ってくる可能性もあるからね。そうなった時、最も頼られるのは僕たちだ」


 逃走した轟以外の『楽園解放』のメンバーは全員逮捕された。ボロボロだったため、まずは病院に送られるだろうが、その後は拘留されるはずだ。


 だが、だからと言って安全になったわけではない。

 轟が逃げたということは、外界もしくはエデン内部に他の仲間が潜んでいる可能性もある。まだ、気は抜けないのだ。


「さて、月宮ちゃん……ああ、早織ちゃんの方ね。着いてきてくれないかな?」


 怪訝な顔をする早織に、藤原は木陰から出て、雨に濡れるのを気にせず歩きながらもう一言付け加えた。


「君も、知りたいんでしょ?」


 他のメンバーには彼の言葉の真意は理解出来なかったかもしれない(早苗は気付いていたようだが)が、早織はそれを聞いてすぐに藤原の後を追った。


 そう、今ここには神原嵐という人物がいる。

 黒神終夜が初めて戦った人物。


「そろそろ僕も、答え合わせをしたいからね……」


 そして、2人は『楽園解放』と邂逅する――

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