第二章 絶望の急襲(4)
黒神と朝影はとある公園に来ていた。
黒神の家からは少し遠いが、かなり広く遊具が集まっている面と広場のような面がある。広場のほうは地面が硬い土で出来ており、運動をするにはとてもいい場所だ。
「人が少なくて良かったわね」
遊具では子どもたちが数人遊んでいるが、広場のほうでは数組のカップルがベンチでイチャついている。
エデンでは能力の特訓をしていても特に不審がられない。それは普通の光景だからだ。
「さ、始めるわよ。まずはとにかく能力を発動して」
「なあ、その前にさ」
黒神はストレッチのために屈伸をしながら尋ねる。
「確かエデンは外界から隔離されてるんだろ? どうやって入ったんだ?」
「ああそれ。んー簡単に言っていいのか分からないけど……」
そうは言いつつも、朝影はまるで当然かのように答える。
「『楽園解放』のメンバーのテレポートで入ったのよ」
「エデンの管理状態はどうなってるんだよ……」
かなり問題のような気もするが、朝影にとってはそうではないらしい。
「実際、エデンから外界に出てくる人間もいるのよ。『楽園解放』の中にもいるわ、エデン出身のメンバーが」
「おい、さらっと衝撃的なこと言いやがって」
「……かなり情報統制されてるのね。危険思想を生まないためかしら」
もしかしたら、エデンに住む人間の中には外界出身の者もいるかもしれない。そう黒神は危惧したが、朝影はそれを否定した。
「外界の人間はデバイスなんて持ってないから、能力者は私や貴方みたいに自然発現した人しかいないわ。つまり、能力者の数はかなり少ないの。さすがに、正面からエデンに入るのは無理だから、無能力者は入れない。そう考えると、もしエデンへの侵入者がいるとしてもその人数はかなり少ないと思わない?」
「……確かに」
だが、侵入者の危険がある以上、安心とはいかない。
黒神はストレッチを終えて、右手に神経を集中させる。すると、右手から始まり白いオーラが全身を包む。
「3回目だから、だいぶ発動しやすくなったみたいね。多分、その能力は習うより慣れろって感じかしら。じゃ、実際に戦いながらのほうがいいかな」
そう言うと、朝影は青いオーラを纏う。そして、両手に氷柱を形成した。
「『氷槍』。まあ、負けてるから偉そうなこと言えないけど……さ、行くわよ!」
――再戦。
今度は、仲間として。