第三章 それぞれの戦い、それぞれの想い(4)
バラバラに動いたはずだったが、二宮と鏑木は同じ場所へと辿りついた。具体的には、運動場である。
「ちょっ、何で一緒の所に!」
「仕方無いだろ!? 俺だって別の所に行きたかったんだよ!!」
言い合っている2人を見ながら、追いかけてきた2人の男たちはお互いに顔を合わせて肩をすくめていた。
「なあ餓鬼どもよ、我らのことを忘れてるわけではあるまいな?」
黒いマスクをした赤髪の男が面倒くさそうに問いかける。
「ちょっと忘れてたよ」
そう応える鏑木に、男は眉をひそめた。
「ふん、まあいい。おい安心院、早く終わらせて轟の援護に行くぞ」
安心院と呼ばれたスーツ姿でホスト風の金髪の男は、ヘラヘラと笑いながら拳を鳴らす。
「鹿島、女の子の方と戦えないからってイライラすんなよ」
「……女子を攻撃するのは我の性に合わん。故に、別に気にしていない。早く終わらせろと言ってるだけだ」
「はいはい、分かりましたよっと」
「安心院、貴様はいつもそうやって……」
突然、鹿島が体ごと安心院の方に向けて説教を始めた。それを見て、鏑木と二宮は唖然としている。
「だー、分かったって。とにかく、さっさと終わらせりゃいいんだろ。行くぞ、鹿島」
「ふん、後でじっくり話そうか。貴様の発言について」
話が終結したのか(それとも中断しただけなのか)、安心院と鹿島がこちらへと体を向けた。そして、それぞれ白いオーラと黄色いオーラを纏う。
「未来……」
「何?」
戦闘態勢に入りながら、鏑木は二宮の方を見ずに彼女に話しかけた。二宮も同じく、鏑木の方を見ずに応じる。
「負けるなよ」
「自分の心配でもしてたら? 私は負けない。だから、蒼真も負けないで」
それだけで十分だった。二宮と鏑木はそれぞれ反対の方向に動く。それに応じて、鏑木には鹿島が、二宮には安心院が着いていく。
数メートル離れた所で、2組は激突した。