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第二章  動乱の産声聞こえし時(8)

 歓談部が揃う数分前。

 緑のジャージを着た少年、轟王牙はとある学校の正門の近くにいた。周りには、彼の仲間がいる。全員で6人だ。


 それぞれ見た目の年齢も違う。とはいえ、轟のように幼く見えても高校2年生という場合もある。


「……そろそろ始める?」


 轟が腰に差した刀を握ったまま、目を閉じて立っているロングヘアで凛とした少女に問う。彼女は風に髪を揺らし、目を閉じたまま、


「ふむ、そうだな。そろそろ頃合か」


 その言葉に、轟を含めて全員が彼女から距離をとった。


「さて、試させてもらおうか『英雄』。貴様の強さとやらを……」


 赤いオーラを纏った少女は左足を後ろに引き、そのまま膝を曲げて腰を落とす。そして彼女は上半身を左へと回し、刀を強く握り締めた。


 すると、彼女の足を中心に炎の渦が出来始め、それは段々と勢力を増していく。遂には、小さな火の粉が距離をとったはずの轟たちにまで届くようになった。


 紅蓮の業火を従え、彼女の姿は妖しく揺らめいている。

 そして、彼女は目を開き、その隻眼の目で学校をしっかりと見つめながら、


「全てを焼き払え、『火炎一閃(かえんいっせん)』」


 少女を覆っていた炎が、彼女が刀を抜くのとほぼ同時にその刀へと集まる。彼女が凄まじい速度で刀をなぎ払うと、刀へと凝縮された炎が巨大な斬撃となって触れるものを破壊していく。


 正門は砕け散り、グラウンドに置いてあるサッカーゴールや、教員たちのものであろう車まで、全てが紅蓮の業火に包まれる。


 少女が刀を鞘に納めるときには、炎の斬撃は数え切れないほどの爆発音を従えながら校舎へと達していた。そこからは、言うまでもなかろう。


 横一線の斬撃が激突した校舎はとてつもない爆発音を街に響き渡らせながら、崩壊していった。

 土台が崩れ、上の階が下の階を押しつぶしていく。忽ち、校舎の殆どが炎に包まれてしまった。


「ふん、セキュリティーもクソも無いな。それほどまでに油断していたということか。『英雄』を抱えているというのにな」


 少女は舌打ちをしながら、本当につまらなさそうに言った。

 生徒たちのものであろう悲鳴が鳴り響く警報に混じって微かに聞こえてくる。


「さあ行くぞ。我々の脅威を見せ付けてやるのだ」


 凛とした表情で歩き出す少女の後に着いて、他の5人も絶叫響き渡る校舎へと近づいていく。

 燃え盛る炎の中を歩く6人の姿は、皮肉にも彼らを誇張するには十分すぎるものであった。


「『楽園解放』、ここに来たれり」

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