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第二章  動乱の産声聞こえし時(6)

 昼休み。それは学生に与えられた数少ないオアシスの1つであり、決して邪魔されたくない時間である。黒神が通う学校には大きな食堂がある。生徒たちは昼食を食堂か持参の弁当(若しくはコンビニで買ったもの)を選択する。


 だが、今日の黒神はそのどれにも当てはまらない。何故なら、彼はいつもコンビニで買う弁当を買い忘れていたからだ。


「畜生、傘買いに行った時に買ってれば……!!」


 昼休みとはいえ、まだ学校の機能は終わっていない。従って、黒神は学校の外へは出られないのだ。

 食堂に行こうにも、既に大勢の生徒で埋め尽くされており、入れるか分からない状況だ。つまり、黒神はお昼ご飯抜きの可能性が高いのである。


 教室では弁当組が楽しそうに談笑しながらご飯を食べている。その匂いに耐えられそうになかったため、黒神は廊下へと出た。

 すると、見知った顔の男女が黒神に近づいてきた。


 男のほうはオールバックの茶髪で、綺麗な碧眼のタレ目。黒神よりも少し身長が低く、右手にはレジ袋を提げている。


 女のほうはショートカットの茶髪、見た目からもその活発さがうかがえるような顔立ちで、どちらかというと少年のような印象を受ける。男のほうよりも更に身長が低く、胸も控えめだ。


「終夜先輩、何してんですかお腹押さえて……」


 少年のほうが黒神に話しかけてくる。


「蒼真、二宮ぁ……腹減ったぁ」

「はあ?」


 少年の名は鏑木蒼真(かぶらぎそうま)、少女の名は二宮未来(にのみやみらい)。共に歓談部の部員である。


「で、弁当を買い忘れた……と」

「ああ、全く自分が憎いよ」


 黒神の教室の前で、3人は輪になるように立って話していた。


「そんな目しても、俺の弁当はあげませんよ」

「鬼畜」

「ちょっと酷くないっすか!?」


 鏑木が盛大にツッこんだところで、黒神は二宮へと話を振る。


「二宮……」

「嫌です」

「まだ何も言ってないぞ」


 二宮はプイッと顔を横に向けて拒否の意を示した。黒神が何を言おうとしているかを察したためだろう。もちろん、何か食わせろということだが。


「つーか、終夜先輩と会うのかなり久しぶりなんじゃ」

「ん、そうだっけか。あー……考えてみれば、冬休み以降一度も会ってなかったな」


 要因は様々である。

 黒神が大きな事件に巻き込まれたこと(というよりも、それが原因で入院生活を繰り返していたこと)や、1年生が試験などで忙しかったこと。


 1年生も部活には顔を出していたのだが、その日は尽く黒神が入院している日だったのだ。


「あたしたち、黒神先輩に聞きたいこと結構あるんですよ?」


 先ほどまで顔を横に向けていた二宮が紅い瞳を輝かせながら黒神に顔を近づける。まるで餌を期待している猫のようだ。


「そうだな、話を提供してもいいが賃料として昼飯をだな」

「それは嫌ですけど……あ、部室に行けば何かあるんじゃないですか?」


 二宮の提案に、黒神は驚いたような表情を見せた。


「その手があったか!! 昼飯にお菓子はどうかと思うが、この際そんなことはどうでもいい!! よし、2人も来るか?」


「話聞きたいですし、もちろん行きますよ! 蒼君はどうする?」

「え、も、もちろん俺も行くよ」


 かくして黒神、鏑木、二宮の3人は歓談部の部室へと向かった。その途中で黒神のデバイスにメールが来たのだが、彼がそれを見るのは少し後になってからである。

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