第二章 絶望の急襲(2)
とりあえず、黒神の部屋は守られた。
朝影に連れられて外に出た黒神は、あることに気づく。
「ああぁぁぁぁぁ!!」
「きゃっ、ちょ、どうしたのよ!?」
後ろで大声を出した黒神に驚き、朝影は足を止める。
「ショートケーキとシュークリーム忘れてきたぁぁぁぁ!!」
「そんなことで一々叫ぶなぁぁぁぁぁ!!」
コルンの町で、彼はショートケーキとシュークリームを買っていた。だが、朝影との戦いで、彼はそのことをすっかり忘れていたのだ。
つまり、彼のスイーツたちはまだコルンに取り残されているということだ。
「と、取りに行く!!」
「ちょっと、馬鹿じゃないの!? そんな暇ないわよ! しかも、もう誰かに拾われてるし、そうじゃなくても水浸しで食べられるわけないでしょ!?」
「苺が、ケーキがぁ……」
「乙女か!?」
「違ぇよ! 知ってるか、甘いもの食べると脳が活性化されて、集中しやすくなるんだぜ」
「そんなこと知ったことじゃ……集中?」
朝影はあごに手を当ててしばし考える。
(確かに、彼の能力に集中は不可欠だけど、でも……)
どう考えても今頃ショートケーキは廃棄されているだろう。だが、集中力が上がると言うのなら、新しいものを買いにいくという手もあるわけだ。
彼女は葛藤した。
数十秒考えた末、彼女が出した結論は。
「分かったわよ。でも、コルンに戻ってる暇は無いわ。近場で新しいのを買うわよ」
これで特訓がスムーズに行くのなら、それはそれで良い事だ(時間のロスはあるだろうが)。それに、少しばかり体を休める必要性もある。
と、いうわけで。
2人はスイーツを求めて、カップルの蔓延る大通りへと歩を進めるのであった!