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第三章  覚悟ノ焔(4)

 喪服を着た大男は鏑木東吾(かぶらぎとうご)と名乗った。

 後ろは肘、前は鼻にかかるほど長い赤髪。鋭い隻眼、逆三角形の顔と、美形と言わざるを得ない男性である。


「まだ残っとった……ちゅーよりは、今来たって感じか。にしてもカップルみたいやな!」


 見た目に反して、軽いノリの人物らしい。そのギャップに赤城は少し驚きながらも、構えは崩さない。


「……お前がこれをやったのか」

「あ? せやで。逆に誰がやったように見えるんや?」


 鏑木の言葉を聞いて、赤城は両手に炎を纏った。


「なんや、もう戦うんか。俺の情報を引き出さんでええのんか」

「必要ない!!」


 両手の炎はその強さを増し、赤城の周りの景色が歪んだ。


「氷川ちゃん、俺が動いたら入り口に向かって走るんだ」

「分かりました」


 氷川は赤城の意図を察したらしい。それは、先ほどの録音を聞いていたからだ。

 次の瞬間、赤城が動き出した。鏑木に向かって突進していく。それを見た氷川は、本部の入り口に向かって走り出した。


「はは、その方が分かりやすくてええけどな!!」


 鏑木は真っ直ぐに向かってくる赤城に両手をかざす。すると、その手から無数の小さな粒状の電撃が発射される。


 それは真っ直ぐに走ってくる赤城の体を貫くはずだった。

 しかし。


「――っ!?」


 電撃弾は全て赤城の体をすり抜けて、後ろにあった壁にぶつかって消えてしまった。壁には焦げたような跡が付いていく。


 問題の赤城は既に鏑木の視界から消えていた。


「な、なんや!? 一体どこに!!」

「こっちだ!」


 後ろから聞こえた声に振り向くと、赤城が炎を纏った両手を鏑木に向けていた。そして、その手から炎が噴射される。


「うぬおぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおお!?」


 赤城の両手から発射された火炎を、鏑木は体を90度近くまで反らして回避した。だが、完全には避けられなかったらしく、前髪の一部が焦げてしまった。

 体を反らした勢いでバク転し、鏑木は赤城から距離を取る。結果として、先ほどと位置関係が逆になった。


「……陽炎か。まあ、炎属性の能力者はよう使う技やな」


 前髪を気にしながらも軽い口調で鏑木は言った。それに対し、赤城は悔しさを顔に滲ませていた。


(くそっ、陽炎を見破られたら……ここで決めておきたかった!)


 入り口の方に目を移すと、扉が開いたままになっていた。赤城の意図通り、氷川は外に出たようだ。そのことが赤城の心を軽くした。


「さて、他には何を見せてくれるんや? ま・さ・か、これで終わりとか言わへんよなぁ?」


 前髪を焦がされたというのに、熱がる様子も無く、寧ろ鏑木は楽しそうな表情をしている。


「何もしてこーへんってことは、これで終わりってことやな。がっかりやで……ほな、後はあの嬢ちゃんに楽しませてもらおうか!!」


 再び鏑木の両手から電撃弾が発射される。発射される直前に赤城は入り口にむかって全力で走った。電撃弾が彼の後ろの床や壁を焦がしていく。


「すばしっこいな! 逃げようったってそうは――」


 直後、鏑木は口を手で押さえて床にしゃがみこんでしまった。当然雷撃弾の雨は止み、赤城は本部から脱出することに成功した。


 外に出ると、すぐそこに氷川の姿があった。どうやら彼女は少しだけ顔を出して中を覗いていたらしい。


「はぁ、はぁ……今のは、氷川ちゃんの?」

「ええ、『酸素増減』です。ただし、焔さんが近くにいたので3%ほどしか減らせませんでした……それ以上は焔さんにも害が及んでしまうので」


 それこそが、氷川の能力の弱点である。酸素の濃度の操作量が多ければ多いほど、精度が落ちてしまう。


「ですが、数十秒は身動きが取れないはずです」

「……走るぞ。とにかく奴から離れよう」


 そう言って、2人は本部から離れるようにして走り出した。だが、彼らが走り出した直後に鏑木が本部から飛び出してきた。


「な……なんで!?」

「あはは! お前ら面白いなぁ!! ほな、俺も本気出させてもらうで!!」


 今度は彼の手ではなく、彼の体中から電撃弾が発射された。

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