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第三章  覚悟ノ焔(1)

 赤城たちが本部に向かう数分前、諜報員である月白(つきしろ)という高校生くらいの金髪でツインテールの少女は『白』の本部で休憩していた。


「はぁ、疲れた疲れた……もう少し諜報員を増やしてくれないかしら」


 彼女がいるのは本部に入ってすぐの、所謂ラウンジのような場所だ。当然彼女以外にも多くの人間がいる。各々誰かと話したり、座ってくつろいだりしている。


 諜報員だけではなく、戦闘員もいる。彼らはリーダー不在の本部を守るために残っているのだ。とはいえ、今回の作戦は奇襲であるため、逆に敵が本部を攻めてくるとは思えない。来たとしても下っ端くらいだろう。だから、戦闘員たちも半ばくつろいでいる。


「のんきなものよね。まあ、リーダーも出撃してるし大丈夫だからいいんだけど」


 ため息を吐いて、ラウンジに設置してあるウォーターサーバーに近づこうとした時だった。

 突然、外から機関銃が連射されたかのような音が聞こえてきたのだ。


「――っ!?」


 その場にいた全員が同じ方向を見る。そして、戦闘員たちが慌てて外へと飛び出していった。


「一体、何なの……いや、でもどうせ命からがら辿り着いた雑魚よね。戦闘員に任せておけば……」


 だが、しばらく経ってもその音が止まない。寧ろ、さらに音が大きくなっている。


「まさか、戦闘員が倒されてるの?」


 残っていた諜報員たちも不安になっているのか、忙しなく動き続けている。その中の1人が、外の様子を見ようと本部の入り口の扉を開けた。


 直後、彼の体に無数の穴が空き、月白の足下にまで吹き飛んできた。


「ひっ!? な、何なの一体!!」


 月白の体には返り血が大量に付いているのだが、それを気にしている暇は無かった。喪服を着た長髪の大男が本部へと入ってきたからだ。


「おーおー、何やまだこんなにおったんか! さすが本部やのう。これでもう少し楽しめそうやな」


 嬉しそうに微笑みながら、彼はそう言った。

 あまりに突然の出来事に、諜報員たちは動けずにいる。そんな彼らを大男は嘗め回すように見渡し、こう言った。


「さて、何人が生き残れるか楽しみやな」


 大男が両手を前に突き出すと、その掌から小さな粒状の電撃が発射された。まるで機関銃のように、大量に。大男はそのまま腕を開閉したり、バレリーナのように回転した。

 無数の電撃弾が諜報員たちに襲い掛かる。


 そこにいた全員が弾幕を避けられず、体に無数の穴を空けて倒れていく。それは、月白も同じだった。気付いた時には激痛が走り、地に伏していた。


「が……あ? ゴボッ!!」


 全員が倒れたのを確認すると、大男は電撃弾を止めた。自身も回転を止め、少しよろけながら、


「いやあ、10秒も持たへんかったか。仕方あらへんな」


 本部の壁や床が諜報員たちの血で塗れている。電球も所々割れており、先ほどよりも少し暗くなっている。


「さて、任務はここを破壊することやけど……建物の破壊は苦手なんやけどなぁ」


 後頭部を掻き毟りながら、大男は言う。


(……これを、リーダーの、ために……)


 月白は意識が薄れていく中で、イヤリング型のデバイスを操作する。その画面には録音と表示されている。


「俺の能力は建物みたいな硬いものは破壊できへんからな。まあええわ、中を滅茶苦茶にしとけば任務完了やろ」


 月白の行動に、大男は気付いていないようだ。その声が彼女のデバイスに記録されていく。

 だが、月白は録音を止める前に絶命してしまった。




 大男は彼女の屍を踏みつけて奥へと進んでいく。その後、本部の奥から機関銃の発射音が響いた。 

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