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第一章  運命の邂逅(12)

「……確かに、実験さえ止めれば戦争は回避できるわ。でも、私は心のどこかで貴方たちエデンの住人を軽蔑していたのかもしれない。能力を振りかざす、野蛮な人間なんだって。だから、エデンを破壊することに論理が飛躍してしまった……」

「エデンの中にも、そういう輩はいる。でもお前も見ただろ? コルンの町で、露店を出して、優しく接客する人たちを。あんな人たちもいるんだよ。そして、ああいう人たちこそ、必死で生きてるんだよ」


 露店の売り上げは好ましいものではない。況してや、コルンは治安が良いわけではない。スイーツ露店の店主も、その心中はけして穏やかではなかっただろう。

 それでも、黒神と話してくれた。嫌味こそ言うものの、友人のような感覚で会話をしてくれる。

 そんな人たちのいるエデンを破壊させるわけにはいかない。それが、黒神の芯である。


「……そう、ね。素直でいい人たちだった。貴方が私を庇ったときも……」

「朝影、考え直してくれないか。エデンを破壊するんじゃなくて、実験を破壊するんだ。それなら俺も協力できる」

「でも、実験を破壊すれば、今能力を扱っている人たちは全員無能力者になるわ。それでも治安が維持できるというの?」

「能力なんかなくても生活はできる。それは、俺が一番よく分かってる」


 彼は、黒神終夜はこれまで能力無しで生活してきた。だが、そこに不自由はない。だからこそ、今もこうして生きているのだ。


「そう……確かに、私の考えは極端だったかもしれないわ。うん、決めた。私は実験を破壊する。だから、貴方も協力してくれる?」

「ああ。ここまで知ってしまったら、真実を知りたくなったしな」

「真実……そうね。ありがとう。そして、ごめんなさい」


 朝影は立ち上がり、深く頭を下げた。


「でも、大変なのはここからよ」

「まあそりゃ、国家レベルだからな」

「そっちもだけど……」


 朝影はその場で右往左往して、


「さっき、『楽園解放』の話をしたわよね。そのメンバーが攻めてくるわよ。エデンを破壊するために」

「それでも、話せば分かるはずだ」

「……まあ、最終的な目的は一緒だからね。多分、メンバーは私が失敗したと思ってるはず。だから、次のメンバーが来るのは……今日か明日ね」


「いくらなんでも早すぎないか!?」

「実験の終了が近づいてるから、私たちも急いでたのよ」

「そういえば。どうして俺はデバイス無しで能力が使えるんだ?」

「あーそれね。んっと、これ言っちゃうと実験の根底を揺るがすかもしれないんだけど……」


 朝影が語った内容はこうだ。


 そもそも、能力とは遺伝子の中に潜在的に眠っている。それをデバイスによって強制的に発現させるのがエデンで行われている実験である。

 それに対し、潜在していた能力が自然に発現したのが朝影などの人間だ。

 後者の例は前者に比べると少ない。


 デバイス使用者と未使用者の能力の違いは、オーラが現れるかどうか。オーラが現れれば、自然発現した能力ということになる。

 となると、黒神は能力が自然発現した人間ということになる。

 ちなみに、『楽園解放』のメンバーは基本的に能力者であるらしい。



 少年は、混沌の世界へと踏み込んだ。

 ここから、物語(サーガ)は始まる。 

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