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第二章  ソノ覚悟ハアルカ(16)

「さーて、邪魔者はいなくなった。結局逃げられなかったなー、残念」

 狩矢の死を悲しんでいる暇など与えない。闇野は赤城に銃口を向ける。


「まー、逃げられたとしても、貴様たちに安息の地はねーがな」

「どういう……意味だ」


 震える唇で、赤城は尋ねる。


「知る必要はねー。死ね」


 だが、そこで闇野の動きが止まった。しかも、その視線は赤城の後ろの方へ向いている。さらに、彼の口角がゆっくりと上がっていく。


 一体何があるのかと後ろを向くと、そこには銃を構えている男がいた。

 銀髪のいかつい20代の男。彼が着ている黒いパーカーは風に吹かれてはためいている。頭にはかなり長い白のハチマキを巻いている。


「誰かと思ったら……久しぶりだなー、清二」


 成宮清二。『白』のリーダーである。


「まさか君がここにいるだなんて、完全に予想外だったよ氷河」

「あー、一応ここは支部だもんな。まーそりゃそうだ。ところでよ清二、それは一体何のつもりだ?」


「可愛い部下を助けようと思ってね。それに、真の覚悟を無駄には出来ない」

「死んだ部下のため、か。貴様らしくねーな。だがよー、それならもっと多くの部下の覚悟を背負わなきゃならねーな」


 闇野はまったく遠慮せずに、満足そうな笑みを見せた。低い声も少し漏れている。


「何がおかしい」

「まだ気付かねーのか。俺様がここにいる理由」


「……まさか!!」

「くくく、気付いたところで、もー遅いぜ。貴様の部下たちは……」

「――赤城君、氷川君!! 今すぐ本部に戻るんだ!!」


 成宮の焦り方が普通ではない。


「リーダー?」

「『黒』の狙いは支部の防衛ではなかったんだ。彼らの本当の狙いは、手薄になった『白』の本部を叩くことだ!!」


 闇野が支部にいたのはそのためだ。彼の登場によるインパクトで本部への攻撃という目的を隠し、支部を攻めてきた強者たちを闇野が足止めする。


 そもそも。

 『黒』のリーダーが出てきた時点で、向こうも何らかの大規模な作戦を行っていると考えるべきだった。


 悔やんでももう遅い。今頃『白』の本部は襲撃されているだろう。そして、今本部にいるのは数名の見張りと、任務を終えた諜報員だけだ。


「新人に頼るのは気が引ける。だが、君たちしかいないんだ! だから真も命をかけた!! 行け、本部を救ってくれ!!」

「させると思うか?」

「氷河、君の相手は私だ!!」

 

 直後、闇野と成宮は激突した。ただそれだけなのに、尋常ではない威力の風圧が赤城と氷川に襲い掛かる。

 闇野と顔を擦るようにぶつかりあいながら、成宮は叫ぶ。


「早く行けっ!!」


 正直、赤城にはわけがわからなかった。

 命の危機に瀕していたかと思えば、今度は『白』のリーダーから本部の救出を頼まれる。これほどまでに、戦況は変わり続けているのだ。


「氷川ちゃん、行こう。覚悟がどうだの、気にしてる暇は無い……」

「ええ、分かってます。狩矢さんが本当はどう思っていたかなんて分かりませんが、彼が託してくれたというのなら、その気持ちを無駄にするわけにはいきません!!」


 まだ体は震えている。死の恐怖など、そう簡単に振り払えるものではない。だが、それでも。

 今は、行くしかない。

 赤城と氷川は全速力で走り出した。来るときに使った道へと入り、本部を目指す。





 ――全ては、2人に託された。

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