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第二章  ソノ覚悟ハアルカ(6)

 準備といっても、やることといえば服装を整えたりするくらいだ。

 中には武器を使う者もいるが、大半の人間は能力しか使用しない。よって、持って行くものは己が身1つで十分なのだ。


 赤城は着替えなど一切持ってきていなかったため、制服姿のままである。とりあえず身だしなみを整えるが、結局戦闘を行えば服が乱れることに気付き、途中で諦めた。

 氷川の方も特にやることはなかったらしく、緊張からか忙しなく動き続けている。


「なあ氷川ちゃん、聞き忘れてたんだけど氷川ちゃんの能力って?」

「だから、ちゃん付けは止めてくださいと何度も……。それに、私の能力なんか聞いても面白くないですよ」


 氷川はため息を吐きながらそう言った。


「いやほら、一応パートナーだし、相手の能力も知っておきたいっていうか。ちなみに俺は――」

「『永遠の炎(エターナルフレイム)』、ですよね」


 氷川の即答に、赤城の目が文字通り点になった。そのまま瞬きを数度繰り返した後、彼は得意そうにしている氷川に尋ねる。


「なんで俺の能力を知ってるんだ?」

「……やはり、覚えてないのですね」


 氷川の声色は暗かった。それと呼応して、その表情もどことなく寂しそうだった。


「いえ、今のは気にしないでください。赤城さんはカントリーの件で有名ですから」


 確かに、カントリーでの事件では赤城も活躍した。だが、マスコミが取り囲んだのは黒神の方だ。赤城の情報など殆ど漏れていないはずである。


「『裏』って、怖いんだな」


 氷川が赤城の能力を知っているということは、『裏』において赤城の個人情報は既に漏れているということだろうか。それとも彼女が調べた結果なのだろうか。

 赤城は後者であることを祈っていた。


「つーか、だったらやっぱり氷川ちゃんの能力を……」

「でしたら、そのちゃん付けを止めてください。そうですね、葵と呼んで下さい。私も焔さんと呼びますので」


 最後の方は赤城の顔を見ずに言った気がするが、赤城は気付いていなかった。


「……分かったよ。だから能力を教えてくれ」


「ん、宜しい。私の能力は『酸素増減(オキシコントロール)』。空気中の酸素濃度を操作出来るんです。濃度を高くすることも低くすることも出来ます。ただし、操作を間違えると私自身にも影響が出ますので、そこまで有能な能力ではありません」


「ネーミングセンスに難を感じるな」


「よ、余計なお世話です!! とにかく、そういうことです。さて、それではあか……ほ、焔さんも約束を守っていただきますよ!」


 先述したが、赤城は案外ピュアな男である。流れに乗れば自然と女の子の下の名前を呼べるが、こう改まって言わせると流石に恥ずかしさがある。


「……ひかわん」

「だからなんなんですかそれは!? 違いますよ、葵ですあ・お・い!! さあ、さあ!!」


 今まで弄られた分の仕返しなのか、顔を寄せてくる氷川の瞳が輝いている。


「あ、時間だ。そろそろ行かなきゃなー」


 棒読みで言うと、赤城はそそくさと部屋を出た。それを見て頬を膨らませながら、氷川も外に出る。


「待ちなさいこの卑怯者ぉぉぉおおおお!!」


 結局、赤城が氷川を下の名前で呼ぶことはなかった。

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