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第二章  ソノ覚悟ハアルカ(2)

 成宮が1階へ下りてから、どれくらい時間が経っただろうか。ようやく落ち着きを取り戻した赤城は深く息を吐いた。


「今の俺に出来るのは、この道を突き進むことだけ。多分、答えを出すには早すぎるんだ……」


 たとえ黒神と同じ道に進んでいたとしても、同じことで悩む日が必ず来るだろう。赤城はそう思い込むようにした。そうでなければ、耐えられないと思ったから。


 椅子から立ち上がり1階に下りようとした時、誰かが階段を上ってくる音がした。狩矢か成宮だと思ったが、違った。

 上ってきたのは、赤城よりも少し身長の低い少女だった。


 肩まである柔らかそうなストレートの黒髪、前髪は中央で分けておりその顔は少し丸みを帯びている。大きな黒い瞳と長いまつ毛、ほんのりピンク色の唇。どれをとっても整っている顔立ちだ。


 黒いシャツの上に白いカーディガンを羽織っており、デニムパンツを履いている。服こそ少し大人っぽく見えるが、顔は童顔である。


「えっと、どちらさま?」


 赤城が素っ頓狂な声で尋ねると、少女は彼の方を見て、


「私は氷川葵(ひかわあおい)です。あなたは確か、赤城……ほ、ほむ」

「ああ、焔。って、何で俺の事を」

「『白』では基本的に2人1組で行動することになってるんです。ここまで言えば、私の言いたいことは分かりますね」


 氷川は両手を腰に当て、控えめな胸をふんすと張った。


「ど、どういうことだ?」

「分からないのですか!? ですから、私があなたのパートナーだということです!!」


 きょとんとしている赤城に対して、氷川は顔をずいっと近づけて怒鳴った。なんだか、風紀委員のような少女だと赤城は思う。


「でも、俺には真が……」

「その言い方、誤解を生みますよ。狩矢さんは諜報が本職ですから、あなたとは組めません。戦闘員は戦闘員と。その方が効率がいいですから」


 赤城の知らない場所でいつの間にか戦闘員にされている気がするが、そもそも戦う気でいたので、彼は文句を言わないようにした。


「つーかさ、いや別に気にしてはないんだけど、さっきまで落ち込んでた奴にいきなりそんなこと言うかね普通」

「……え?」

「いや、え?」


 思わず素で聞き返してしまった。数秒間、2人の間に沈黙が流れる。そして、その沈黙を破ったのは氷川であった。


「ぎゃぁぁぁあああああ、失敗した!! ちょっと大人な感じの印象を与えたかったのにぃぃぃぃいいいいい!! っていうか、あのド天然男、そういうことは先に言ってくださいよぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおお!!」


 その瞬間、赤城は気付いた。


(あ、この子弄りやすいタイプだ)


「ああ、赤城さん、このことは忘れてください! 全部あのド天然の仕業なんです!!」


 真っ赤な顔で、瞳には涙を浮かべて氷川は言った。上目遣いの彼女を見て、赤城の中の何かが解放された。具体的には、彼の素が。


「あー、心に傷を負ったなー」

「え!? えっと、えっと、しゃ、謝罪しますからその……」


「それくらいじゃこの傷は治らないわー。誠意が足らんのだよ、誠意が」

「じゃあ、どうしろって言うんですか!?」

「そうだな、せめて挟んで擦るくらいのことは……」


 赤城が言っていることの意味が分からなかったのか、氷川は涙目のまま首を傾げた。それが面白くて、赤城はトドメを刺そうとその言葉の意味を伝えようとして、彼女の胸元に視線を移す。

 だが。


「……小さっ」

「気にしてることを言うんじゃねぇぇぇぇええええええええええ!!」


 口調が崩壊してしまった氷川が赤城の顎目掛けて渾身のアッパーを繰り出す。それがクリーンヒットしたため、赤城の体は一瞬宙に浮いた。










 その後、何となく様子が気になって2階に上がってきた成宮が見たのは、床に大の字で倒れて気絶しかけている少年と慌てて彼の体を揺すって謝っている少女の姿だった。

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