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第一章  運命の邂逅(10)

「痛て……はっ、朝影!?」


 盛大にこけて顔面を氷で強打した黒神は、顔を抑えながら立ち上がる。だが、さきほどまで戦っていた少女、朝影光はまだ地面に仰向けに倒れたままだ。


「か、勝ったのか? 俺が、能力の無かった俺が?」


 改めて、デバイスを確認する。

 しかし、やはり『不適合』としか表示されていない。では、あの能力はなんだったのか。そういえば、黒神の部屋で朝影が能力を見せたとき、赤城は恐怖の表情を浮かべていた。あれと何か関係しているのだろうか。

 いずれにしろ、朝影に話を聞く必要がある。


「おい朝影、あれ、ちょっ、死んでる? おーい! ……うわぁぁぁ!! ひ、人を殺してしまった!? どどど、どうすれば――」

「生きてるわよ」

「うおうっ!?」


 必死に体を揺する黒神の手を払いのけ、朝影はゆっくりと立ち上がる。


「お、お、お……や、やるか!」

「もう戦わないわよ。多分、次も負けるから」


 慌てて臨戦態勢をとる黒神に対し、朝影は冷静に答える。


「まさか、私が負けるなんて……良いわよ、好きなようにしなさい」

「は?」

「敗者に文句を言う権利は無い。煮るなり焼くなり好きにして」


 抵抗の意思は無い。朝影は両手を広げてそれを示す。

 だが、勝者である黒神は唖然としていた。


「何よ、早くしてよ」

「いや、その……じゃあ、とりあえず氷を溶かしてくれないか。いや、それよりも、おっちゃんたちは生きてるのか!?」

「多分。そう簡単に死ぬような能力じゃないわ。元々は凍らせた後に、その氷ごと相手を破壊したりして殺すやつだから。……解」


 全てを包んでいた氷が解け始める。解けた氷は水となり、地面に染み込んでいく。


「まだそこまで時間も経っていないし、少し暖まれば問題ないわ」


 氷づけにされていた人々は自分の無事を確認すると、大きな歓声をあげた。それは黒神に向けられた賞賛であり、朝影に向けられた非難である。

 黒神と話していた店主を初め、露店の店主たちは足元の石を次々に朝影に投げつける。

 恐らく、事態に気づいた『裏』の能力者たちもすぐに攻めてくるだろう。


「これが、敗者の末路ね。貴方も覚えておくといいわ。自分が敗北したとき、どうなるのか」


 朝影は抵抗しない。恐らく、彼女が抵抗すればこのような反抗も一瞬で鎮圧できるだろう。だが、彼女は自分が負けたことを知っている。だから、抵抗しない。

 だが、この男は違った。


「ま、待て待て! みんなの気持ちは分かる、でもとにかく今は暖をとってくれ! 死なれてもらったら困る!!」


 黒神は朝影を庇うようにして前に出た。

 石を投げていた者たちも、恩人である彼には石を投げつけられない。それに、体の異常も感じ取っているのだろう。彼らは顔を見合わせ、この場を黒神に任せる旨を伝え、それぞれの家に帰っていった。


「お、驚くほど素直だな……なんだか怖いぞ」

「それは、貴方が恩人だと分かっているからよ。良い人たちばかり、なのね」

「……ここにいたら、能力者たちが集まってくる。いったん俺の家に戻ろう」

「……分かったわ」


 実際、路地裏のほうから能力者と思しき者たちの咆哮が聞こえてきている。犯人を捜して駆け回っているのだ。そして、それだけの人数を相手にできるとは思えない。

 黒神と朝影は走ってコルンの町を脱出し、ホープへと向かう。



 ――ところで、黒神(かれ)は何か忘れ物をしていないだろうか?

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