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第一章  初心者ノタメノ説明書(7)

 かくして、赤城と狩矢は路地裏を歩いていた。時間帯は朝であるため、はっきりと道の構造が見える。だが、逆を言えば突然襲撃される危険性も高いということだ。


「にしても、『裏』って狭い場所だらけだな」

「ええ、仕方ないですよ。カントリーみたいに、その街全体が『裏』という場所ならまだしも、ここはホープの『裏』ですから。『裏』が狭いのは当然です」


 カントリー、という単語に赤城の眉が動いた。あの場所にはいい思い出がない。


「ああ、ちなみにカントリーの事件は『白』でも有名ですよ。『楽園解放』の思想は僕たちと似て非なるもの。僕たちはエデンの破壊は望んでませんでしたから」

「じゃあ、終夜の名前ももう……」


「知れ渡ってるでしょうね。ですが、彼が『表』の人間である以上は『裏』の人間――特に『黒』の連中に襲撃されることはありません」


 それを聞いて、赤城は安堵の息を吐いた。親友をサポートするために内緒で『裏』に入ったのに、その彼を巻き込んでしまっては元も子もない。


 とはいえ、その『表』でのルールがどこまで遵守されるのかは不安が残る。黒神は今後、より一層大きな事件に首を突っ込むことになるだろう。具体的には、エデンが行っている実験に関するものなど。そうなれば、『黒』にとっても直接的な脅威となる。


 『表』の人間でありながら、その行動が『黒』の利益に直接影響する人間。それを放っておけるだろうか。たとえ警察に逮捕されてでも彼を消しておきたいとは考えないだろうか。


「焔さん? あまり難しいことは考えないほうがいいですよ。それに、終夜さんは強いお方でしょう? きっと大丈夫ですよ」


 狩矢は隣を歩く赤城の顔を覗き込みながら言った。


(確かに、終夜は強いかもしれない。実際、あの能力は強い。でも、能力者としてはまだ初心者だ。偶々神原が能力バトルの常識から外れた存在だったから良かったものの、あれが純粋な能力者だったら……)


 神原の能力は、相手の能力を無効化するものであった。それが寧ろ、黒神には相性が良かったのだ。


「さて、デバイスを見てください」


 しばらく歩いて、狩矢は50メートルほど先の納屋のような建物を指差した。言われた通りにデバイスを見る。


「地図のアプリが入っているはずです。それを起動してください」


 赤城のデバイスのホーム画面に今まで見たこともない、黒いアイコンが数個追加されていた。その内の1つに、地図と表示されている物がある。赤城がそれを起動すると、半径1キロ以内の地図が表示された。どうやら、これがデフォルトの設定で、操作することで拡大縮小が可能らしい。


 地図を少し縮小すると、現在位置を示す矢印のようなアイコンの近くに、Sと書かれた建物が映っている。

 方向などから考えても、狩矢が指を指している建物のようだ。


「それが補給所のマークです。ちなみに、必要な時以外は入らないようにしてください。使い捨てとはいえ、無闇に減らされるのはマズイので」

「だから少し離れた場所で止まったんだな。なるほど、あれが」


 やはり、最初に狩矢が言ったように経験することが大事なのだろう。実際に使用したことによって、地図の使い方をすぐに覚えられた。


「あと、焔さんの場合はあの中で能力を使うことも控えてくださいね」

「爆発しちまうから、か」


 焔の能力は『永遠の炎(エターナルフレイム)』。火薬などが詰まった補給所で使えば、大爆発を引き起こして補給所の破壊だけではなく、味方にも被害が広がってしまう。


「分かった、気をつける」


 赤城がそう言うと、狩矢は右手の親指を立てて白くて綺麗な歯を見せながら、


「グッドです」

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