第一章 初心者ノタメノ説明書(2)
組織の本部、しかもリーダーがいる場所ともなれば大きなモニターや、パソコンなどが並んでいるようなイメージが湧く。しかし、狩矢が言った通り実際はそこまでハイテクではなかった。
階段を上りきると、そこは学校の教室のような場所であった。最前に教壇のような場所があり、それに向かうかたちで木製の机が数個並んでいる。椅子も木製だ。中央の机には数台のパソコンが置いてあるが、どこにでも売っているノートパソコンでやはりハイテクとは言い辛い。
「これが、本部?」
「イメージと違いましたか? まあ、私も最初はそうでしたから」
狩矢が苦笑いをしながら言う。その苦笑いまで爽やかだった。
「あそこにいらっしゃるのが、『白』のリーダーです」
狩矢は教壇のような場所を指差した。そこには、白いシャツに黒いパーカー、そして黒いジーンズを履いたいかつい男が堂々とした態度で座っていた。演台のせいで下半身は見えないが、恐らく彼は股を開いて座っているのだろう。
肘にまで届くほど長い銀髪で、前は右側をかき上げて左側は目が隠れないようにして下ろしている。その鋭く黒い目は、見るものに威圧感を与えるだろう。上半身だけを見ても筋肉質な体形であることが分かるなど、何処か神原のような印象を持つ男だ。年齢は恐らく、20代後半か。
「リーダー、焔さんを連れてきました」
狩矢がリーダーに話しかける。リーダーはまず赤城を見て、そして狩矢を見た。その行動だけで赤城の体が強張る。
そして、彼はこう言った。
「真、ご苦労だった。さて、赤城焔君、初めまして。私が『白』のリーダーの成宮清二だ。以後、宜しく頼む」
成宮は立ち上がり、赤城の方へと近づいてきた。彼の身長は赤城よりも頭一個分高く、筋肉質であることも加味すると、格闘戦は絶対に避けたいタイプである。
成宮は赤城の前まで来ると、握手を求めた。赤城は反射的に彼の手を握った。
「まあ、そう硬くなるな。とりあえず座ってくれ」
そう言うと、成宮は赤城と狩矢を最前列の席に座らせ、自分は演台へと戻った。
「聞きたいことはたくさんあるだろう。だが、その前に」
何故か成宮は身を屈めて、演台の中を漁りだした。そして数秒後、小さなクラッカーを取り出した。
「あの、リーダー?」
狩矢が尋ねるが、成宮は答えずにクラッカーの紐を引いた。クラッカーの破裂音が響き渡り、火薬の匂いと共に数本の紙紐が舞う。
「ハッピーニューイヤー。いや、一応これくらいはしておかないとと思ってな」
「…………」
赤城は狩矢の方を見たが、彼もどうしていいのか分からず固まっている。どうやらこれは予想外の行動だったらしい。というか、さっきまでの威圧感が綺麗に消えてしまった。
「じゃ、本題に入ろうか」
赤城は心の中でこうツッコんだ。
(入りにくいわ!!)