白い部屋にてテンプレる
ひさしぶりに書いてみました。リハビリ兼ねてます。プロットもつくってないやw
目を開くと、そこは純白の世界だった。
どこもかしこも、白白白白白。
なんか、ゲシュタルト崩壊しそうなくらいに真っ白けーの世界が広がっていた。
一瞬、あまりのわけのわからなさにひるみかけるが、そこは年の功。
何事も無いかのように不適に笑うと、あごに手を当て、予測を立ててみる。
気分は名探偵。
世代的にはじっちゃんの名にかけてといいたいが、若い子たちにはメガネの元高校生探偵の方がわかりやすいか。
それにしても、あの頭脳は大人な小学生はいったいいつまで黒の組織と戦っているのだろうか?
かれこれ、20年くらいいなるんじゃねえのかな?いい加減、解決くらいしてもらいたいもんだ。
いかんいかん、話が脱線した。
そして、再び考える。
たしか、同僚が怪我で病院送りになったせいで二週間休みなしで働いて。
あまりの疲れとやってられなさに、酒をしこたま買い込んで。
家でたこわさび食いながら懐かしい歌を熱唱して。
で、ぐでんぐでんに酔っ払って意識を失ったような気がする。
まぁ、気がするだけだ。酔っ払いすぎて、あまりはっきりとは覚えてない。
だが、確実に、家にいるはずだ。
俺が夢遊病患者だったり、誰かに拉致られたりしない限りは。
こんなひなびたおっさんを拉致しても、誰も得しないだろうから可能性は限りなく低いだろうけども。
夢遊病の件は・・まぁ、よくわからんが、そんなことはないんじゃないかね?と勝手に思っておくことにしよう。
うむ・・・なるほど、よくわからん。
今の状況がまったくよくわからん。
別に焦ってもないけれど、悶々と考えていた俺に、声が届いた。
耳ではなく、頭の中に。
「ようこそ、選ばれしものよ。よくぞまいった」
無駄に威厳のある声。
どっかのわんこなお父さんの声に似てるな。
そんな風にあわてもせずに思っていると、頭の中の声はちょっと驚いたような感じになった。
「いきなりこの状況になっても、驚きもしないとは。ふむ、やはりわしの見立ては正しかったようだ」
満足げな声音になるわんこ父さん(仮)に、俺は声に出して答えた。
「まぁ、実際に不思議な経験は昔からよくしてましてね。とりあえず、冷静ぶってみることにはなれてます。で、あなたはいったい?」
頭の中で考えるだけで届きそうな気もしたが、一応礼儀をわきまえて唇に言葉をのせる。
考えて伝わらなかったら恥ずかしいからなんて思ってないよ?ほんとだよ??
俺の気持ちを知ってか知らずか、わんこお父さん(仮)は再び声を届けた。
「わしは神だ」
「ほぉ」
「む?信じられないのか?やはり?」
俺のリアクションが余りに薄かったためか、ちょっとしょんぼりな感情が伝わってくる。
「いやいやいや、ただ驚いてるだけです。疑ってなんて無いですよ?で、そんな神様が俺なんかになんの御用で?」
「ふむ、とりあえず信じてくれたのなら話は早い。おぬしに頼みたいことがあっての」
「頼みたいこと・・・ですか」
神様の頼みごと・・・なんだ?勇者になって異世界でも救えってか?
厨二病満載の思考を頭に浮かべると、ドヤ顔が浮かぶような声音でわんこお父さん(神様?)は言った。
「そう、おぬしには世界をすくってもらいたい」
「痛いのは嫌です」
即答。
魔王と戦って死にかけたり、魔物と戦って死にかけたり、なんかよくわからん王子の嫉妬に巻き込まれて死にかけたりはしたくない。
「痛いのは嫌です」
もう一度言ってみる。大事なことだから二回言いました。大事なことだから二回言いましたよ?
「まぁ、痛いのは嫌じゃよな」
神様、納得。
でも、納得してくれても結局魔王退治させられたりするんじゃね?
するんじゃね??
そんな風に思っていると、神様から条件が。
「魔王を何とかしてもらいたいが、なに、お主自身が積極的に戦わなくてもよい。異世界に行ってもらいたいのは本当だが、特に何もしなくても、お主が行くということだけで、その世界は救われるのじゃよ」
ほ~、なんか、楽なこってすな。
風が吹けば桶屋が儲かる的な?薄い本を作ると腐女子が喜ぶ的な?それは関係ないか。
「いいですよ」
「そうか、やはり無理か。そうじゃな、いきなり言われてもそう答えるよな。じゃがな、お主に都合のいい条件を・・・って、なんだって?」
「だから、いいですよ、俺、行っても」
無言。
そんなにびっくりすることかね?
でも、まぁ、暇つぶしにはなるだろうし、運がよければ帰ってこれるだろうし、なによりも俺は厨二病をこじらせて中年まっしぐらになっているおっさん。
異世界トリップ物は大好物です。
「そ、そうか、ならばありがたい。そうか・・行ってくれるのか・・・うむ、説得しようとしたのに肩透かしじゃな」
再びのしょんぼり声をあえて無視して、俺は言葉を紡ぐ。
「で、どうすればいいんです?」
「あ、ああ・・・じゃあ、詳しい説明は言った先で行う。お主もこんなじいさんより、かわいい女子に説明されたほうが嬉しいじゃろ?」
「はい、そうですね。たしかに、かわいい女の子は大好きです」
正直に答えると、響く苦笑。
「正直でけっこう。では、とりあえず、飛ばすぞ」
神様の声のあと、急速に遠くなる俺の意識。
眠りの落ちるかのような感覚の最中、俺は一つだけ気になったことを問う。
「どうして俺が選ばれたんですか?」
「それは、まぁ、くじ引きじゃ。あみだくじじゃな」
そうか、あみだくじか。まぁ、そんなもんか、人生なんて。
そうして、俺の意識は完全に途絶えた。