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ビビりすぎだぜ、歳さん!  作者: 夢辺 流離
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KOSHITSU[個室/固執]

 タイトルを少々変更しました。

「まだ歳さん、機嫌が悪いねぇ」

 頓所に戻り、各自がめいめい散り散りになっていくのを眺めながら総司はそう呟いた。

まさか歳三の機嫌の悪さの理由が自分だとは夢にも思いもしていなかった。



 ――歳三は副長という立場故に小さくも一室を与えられていた。

元々はもっと大きな部屋が与えられようとしたのだが、

「元は百姓の出故、このほどの大きさでないと落ち着かなくてね」

 と本人に言われればではそのようにと言わざるを得ない。

後々、謀を余人に知られぬ為に奥の部屋を選んだのであろうと隊士の間で噂されるようになるーー




 町の見回りを終えた歳三は部屋に入るなり、

「くそったれが!」

 と叫んで唯一の家具である文机を蹴飛ばしかけて寸前でピタと止める。

この文机は歳三のお気に入りで、それなりの値段がしたが、飲まずにはいられない毎日の酒を我慢してまで買った一品だった。

端の引き出しから半紙の束をとり出すと、何事かを書き付けた。

歳三の感情を落ち着けるときの癖になっている。

かつて試衛館の道場で笑いものにされてから、人目につかないところで書くようになった。

奥まった辺鄙な部屋をあてがってもらったのも、うっかり入ってきた隊士の目につくことがないようにだ。


 歳三は思う。

町衆に壬生狼、壬生狼と言われるのはまぁ仕方ないとしよう。

なぜ総司だけが

「一番隊長の沖田さんよ~」

「菊一文字の沖田さん!かわいい!」

「総司~また遊んでよ~」

 などと女子供に人気があるんだよ。

俺なんか女子どもには「鬼」と忌み嫌われ、無論男共も「鬼」呼ばわりだ。そもそも「鬼長」ってなんだよ!そんな役職聞いたことねぇよ。

俺が鬼を束ねてるみたいじゃねぇか!

俺の上に本物の鬼みたいのがまだいるよ!!


総司はタッパはある割に愛嬌があって、子ども好きなのは知ってる。

だけどな、かわいい面して子どもさながらの無邪気さで近づいて、人斬り包丁を遊び道具にズドンだぜ?

見た目が怖い鬼のほうが元々近づかないように!なんて警戒できる分マシだろうが!


 だいたいだな、町民に刀の目利きなんて求めるべくもねぇのはわかってるけどさ、隊員の、それも限られたメンバーの羽織を揃える金にさえ苦労してるってのに、個人でそんな業物を持ってるわけねーないって。

もちろん、命を預けるもんだし、それなりにいいものを持ってる自負はあるが無銘の一品だっての。

虎徹だ菊一文字だって、そりゃあ道場時代にいつか持つぜって息巻いてた頃の願望じゃねぇか!

なんて言う俺のも古刀の和泉守兼定(笑)なんだけどな。


ああ、道場で馬鹿やってたころが懐かしいな・・・グスっ。

うっせ、泣いてねーし!


 荒ぶるままに筆を走らせてようやく落ち着いた歳三であった。

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