Section5
Claire
電車に乗ってから数十分、私は窓からの眺めを見ながら座席に横になっていた。
朝の8時過ぎには出たけれど、ジルの話では最初の目的地のクラクスまでは4時間かかるという。
なのでまだあと3時間以上電車の中にいなければいけない。
「ねえ、クレア!みんなでゲームやるんだけどクレアも一緒にやらない?」
そんなことを思っている中、ルーシェが大富豪に誘ってくれた。
……で、大富豪って何だっけ。
この手のゲームには本当に詳しくないのでよくわからない。
「いいんだけど……ルーシェ、どういうゲームだっけ?」
「ええと、数字の順にカードを出していくんだけど、8は今あるカードを流したりJは昇順から降順に出す順番が変わったり……」
説明を聞いてみるも、なんだかさっぱりわからない。
と、思っていったのだけど――
意外にやり始めると慣れてくるもので、コツが掴めてきた。
「また俺が大貧民か」
「ラルフあんまりしゃべらない割に顔に出るよね」
「そうか?まあ次は大富豪になって見せるさ」
「そう言って今までほとんど大貧民のままじゃないか」
ジルは貧民でラルフは大貧民。
……貧民同士仲良く二人で話していた。
「なんか、ぜんぜん平民から動かないんだけど……」
ルーシェはほとんど平民のままだった。
そしてなぜか私がルーシェを抜いて富豪になることが多い。
「クレアなんで初心者なのにそんな強いの!」
「わからないけど、なんかコツが掴めて来たみたい。というか、それを言うならティアナでしょ」
「う……確かに」
ティアナは最初はルール聞いてもちんぷんかんぷんな顔をしてたのに、あっという間に大富豪を独占するようになっていた。
……この子は変なところが変に抜けてるというか、逆に秀でてるというか……
「大富豪♪大富豪♪」
よくわからない子だった。
しばらくして、気がつくともうお昼の時間だったので昼食を電車の中で食べることになった。
外の眺めは相変わらずよくて一面に緑の山が連なって見える。
このあたりの景色は本当に綺麗で、見ていてまったく飽きが来ない。
……で、肝心のお昼は朝、私とルーシェでサンドウィッチを全員分買った。
それにしても、そんな綺麗な景色を見ながら昼食を取れるのはすごく気持ちがいいと思う。
サンドウィッチ何食べようかな……
「たまご欲しい!」
そんなことを考えているとティアナが子供のようにたまごをねだってきた。
「はい、どうぞ」
なんかちょっと自分勝手といえばそうなんだけど、憎めないんだよねこの子。
「私ハムサンド!」
……ルーシェ、あなたがティアナになっても私はジルみたいに面倒見ないからね。
「……」
「クレア、ハムサンド!」
「私はハムサンドじゃありません」
「……う」
まったく、ルーシェも最初はぜんぜん乗り気じゃなかったのにいざ来て見ればこれ。
でも……実際楽しそうで何よりっていうのが本音なんだけど。
「ティアナの真似してもだめだからね」
「ごめんなさいクレアさん、許してください」
「はいはい」
こんな感じだけど、本当にルーシェはかなり楽しそうだ。
歴史に興味あるだけあって、こういう旅行に興味を持ってくれたのは友達の私としても嬉しいことではある。
まあ、これからどうなるかわからないからまだなんともいえないけど。
――昼食が終わると、気づいたらもうあと十数分で最初の目的地、クラクスに着くとのアナウンスが入ってきた。
ゴミの片付けなどをしながら、私たちは荷物をまとめて降りる準備をし始めたのだった――