Section37
Erna
ブロンシェルへ来て、早一週間が経った。
私はラインブルク家の親戚のところでお世話になっている。
……一応は貴族でお屋敷も持っているけれど、生活は決して良いとはいえない。
戦争で国土は荒れちゃって、食べるものに困る日もあるくらい。
まだ首都に居る分私たちはましだ。
地方はまだ戦いが続いているところもあるみたいだし、食べるものがまったくないところもある。
事実上は、ブロンシェルとミネラドロワは降伏して条約の締結にこれから入るとアルフォンスは言っていた。
……シエラちゃんとはあんな別れ方をしてしまったけど――後悔はしていない。
どちらにせよもう終わったことなんだから。
私は私ができることをすればいいんだ。
今までどおりピアノを弾いてブロンシェルのコンサートに出れればそれだけで嬉しい。
――もっとも、ブロンシェルが復興できたらだけど……
……それにもう戦争は終わったんだしね。
私もブロンシェルを立て直すために少しずつがんばって行けばいいんだ。
ちょっとずつで――
「お嬢様、少しよろしいでしょうか?」
「アルフォンス……?いいよ」
私がそういうとアルフォンスは一礼しながら私の部屋に入ってくる。
アルフォンスとは長い付き合いになるけれど、こういうところは昔から何一つ変わっていなくて少し嬉しい。
「お嬢様、言いにくいことなのですが……あれでよかったのですか?」
……あれって言うのは、多分シエラちゃんとの事だよね。
別にもうシエラちゃんなんか……
第一私がこうやって苦しんで白の国で貧しい生活を送っているのだってシエラちゃんのせいでもあるんだ。
あんな風に色々と教えてくれたヴァイスハルト伯も、結局シュヴァルツ側につくことを賛成していた。
ブロンシェルの肩を持ったのはアルフォンスしかいなかったんだし……
それを考えてみれば、こうする以外に方法はなかった。
きっと――仕方がなかったんだ。
「……いいよ、もう。アルフォンス、それよりも今は自分たちのことを考えたほうがいいんじゃないの?」
「……そうですね、確かにお嬢様の言うとおりです」
話が途切れて、シーンとした空気が流れる。
きっと私もアルフォンスも考えることはいろいろあるんだと思う。
しばらくして、アルフォンスは沈黙を破って口を開いた。
「そういえばお嬢様、もうそろそろお昼ですがどうしますか?」
「もちろん食べるよ、ちょっとしたら行くね」
「……分かりました、ではこれで失礼します」
そういうとアルフォンスはそそくさと部屋を出て行った。
私がこれからやっていくのは――ピアノの練習。
……幸いこのお屋敷にはピアノがある。
だからずっと練習していても大丈夫、今まで通りにできる。
ブロンシェルが復興するのがいつになるかは分からない。
でも――
……きっと、そのうちコンサートができることを信じて、私は練習を続けるだろう――




