Section25
Erna
何故か今日はある人に招待を受けている。
……事の始まりは先日、手渡されてた私宛の手紙の差出人はWeishard・Rosenmllerと書いてあった。
(――ヴァイスハルトって……確かシエラちゃんたちの会議の人だよね……?)
確かそうだったはず。
アルフォンスに聞こうとも思ったけど……ちょっと考えてやめることにした。
迷惑かけたくないし、これはこれで面白そうだし。
手紙の内容は3日後に結構大きな晩餐会が催され、それに出席してほしいとの内容だった。
私が招待されるのは珍しい。
今までこういう晩餐会はあったけど、あまり出席したことはなかった。
……お屋敷にいても仕方ないし、シエラちゃんも呼ばれてるんだから言ってみるのもいいと思う。
(――と、思って来ちゃった)
一応アルフォンスにはパーティに行くとはいってあるけど……
たぶんアルフォンスも呼ばれてるし、顔あわせることになるんだろうけどね。
晩餐会自体は王宮で行われていて、大分広いから簡単に知り合いに会うのは難しい。
「――あれは……ラインブルクの……」
「……敵国の味方をする奴がなぜ招待されてるんだ」
なんだかいろいろと囁き声が聞こえるけど……
(――あれ?私の……こと?)
「ラインブルクの娘は付き添いに家のことから何まで全部丸投げだってよ」
「それで、ブロンシェルの重臣の家柄かよ」
「……なんでここに招待されてるのあの女」
(――これ……全部私の悪口……だ)
私は……外の人からこんな風に思われていたの?
最悪だ……こんな所、来なければ良かった。
帰ろう、とりあえず外に出たい。
そう思って私は反対側を向いて出口のほうへ向かおうとする。
「おっと……」
「――きゃっ」
いきなりぶつかってくるなんて最低……
はやく外に……って……え?
(――なに……これ……)
……気づいたら私のドレスはびしょびしょで、周りの人はざわついていた。
テーブルの上で横になっているグラスを見れば分かるけど、さっきの人はたぶん……わざとこぼしたんだ。
何故か分からないけれど、私は自分がこの晩餐会の招待客にいじめられている事だけは分かった。
そう考えたらとたんに悲しくなってきちゃって、視界が滲んでくる。
「うぅ……っ……」
シエラちゃんもアルフォンスもどこにいるのか分からない。
……もうこんな所嫌だよ……
周りの人の中には私をあざ笑うように笑い声を上げている人もいた。
ここには誰も味方がいないと思うとまた悲しくなる。
そう思ったとき、後ろから小さな声で囁かれた。
「エルナ・ラインブルク、あの端のテーブルで待っていてくれ」
「……えっ?」
「いいから早くしろ、俺はこの場を収める」
――この人は誰……?
私を助けてくれたのか分からないけれど、ここに突っ立っていてもどうしようもないので私は言われたとおりに端のテーブルの前で待つことにする。
しばらくして、さっきの場所で大きな声が聞こえた。
「何を騒いでいるんだ!たかが水がこぼれたくらいで大騒ぎをするな!」
「お前たちも何を見ているんだ、さあ片付けを手伝え」
手下の部下に命令しながらその場を収めていく。
(――もしかしてあれがヴァイスハルト伯……?)
一通りその場が静まった所で、その人は私の所へやってきた。
「初対面、だったな。俺はヴァイスハルト・ローゼンミュラーだ、お前のことはアルフォンスから話は聞いている」
「……あの、私を今日呼び出したのって……あなたですよね?」
「ん?……ああ、手紙のことか。しかし、ここで話すのはあまりよくない……場所を変えよう」
ヴァイスハルト伯は周りを見渡してそう言うと、ついて来いとだけ言って歩き出した。
確かにここで……またさっきみたいなことが起きるのは嫌だ。
そう思って私はヴァイスハルト伯についていくことにした――
「……それじゃあここにかけてもらおうか」
ヴァイスハルト伯に案内されたのはかなり大きな部屋の一室だった。
たぶん……四家の会議の当主にはこのような大きな部屋が王宮から貸し出されているのだろう。
「あの……」
「……どうした?」
「さっきはその……ありがとうございました」
「あぁ、気にするな。俺はああいう馬鹿騒ぎか嫌いなんだ」
(――この人は私に何が言いたいんだろう?)
助けてくれたのはいいけれど、どうも信用できない。
そもそもなぜ私をこの晩餐会に呼んだのかも分からないし……
「エルナ嬢は今現在、アルジェントがどういう状況にあるか知っているか?」
私がいろいろ聞こうと思っていた矢先、ヴァイスハルト伯のほうが先だった。
「……分からないです」
「アルフォンス伯からは聞いていないのか……」
――私は政治のこととか戦争のこととかはよく分からない。
今まではピアノが全てだったし、それは多分これからもそうだと思う。
黙っている私を見て、ヴァイスハルト伯は話を進めた。
「先日から、アルジェントはブロンシェルに宣戦布告をした」
(――え?)
一瞬言われたことに対する理解が追いつかなかった。
……アルジェントがブロンシェルと戦争?
だって、アルジェントとブロンシェルは同盟国のはずなのに……
「驚くのも無理はないだろう、我々アルジェントはシュヴァルツと手を組んだのだからな」
(――アルジェントが……シュヴァルツと手を組んだ……?)
信じられなかった。
だけど……それと同時に、なぜ私がさっきの晩餐会で悪口を言われているのかが分かった気がする。
私は立場上、敵国の重臣の家柄の娘ということになるわけだし。
ヴァイスハルト伯の話を聞けば、アルジェントがシュヴァルツと同盟を結んだのは本当につい最近のことみたい。
そして、それとほとんど同時にブロンシェルに宣戦布告をしたと、私は聞いた。
「今後のことに関してだが、いっそう白の国にかかわる家柄の者は立場が危うくなるだろう」
「アルフォンス伯も例外じゃない、もともとあの男はラインブルクの当主ではなかったのも非難するのなら格好の的だ」
「……どうにか……ならないんですか?」
我ながら子供みたいなことを聞いてしまってちょっと恥ずかしい。
――どうにかするためには、ブロンシェルが勝つか、アルジェントが負けるかしかないのに。
「今の時点ではどうにもならないだろう、もしエルナ嬢が政治や世界情勢に興味があるなら俺が教えてもいいが……」
「アルフォンス伯は教えてくれないのだろう?」
「……アルフォンスは、きっと私に心配とかをかけたくなかったから教えなかったんだと思います……」
「それじゃあ次から俺の所に来ればいい、毎回の会議ごとにくればいち早く情勢を教えられるからな」
(――確かに、私もそういう情勢を知っておいたほうがいいかもしれないよね)
何かしら言い訳をつければここに来ることもできるだろうし。
……それに、この人なら偏見で私を馬鹿にしたりしないと思う。
あんな思いをするくらいなら、この人からいろいろ聞くのも悪くないかもしれない。
「……わかりました、ええと……じゃあ今度の会議が終わったらまた来ます」
「そうか、話を聞かせることならできるからな、いつでも来るといい」
「俺はこれから執務がある、すまないがこれで失礼したい」
そう言って、ヴァイスハルト伯は部屋から出て行ってしまった。
(――私はこれからどうしよう……)
正直な所、今日聞いたことはショックが大きい。
アルフォンスも私に黙っているのは大変だと思うし……
(――とにかく、今日は帰ろうかな……)
……いつまでもここにいてもしょうがないよね
そう思った私は、ひとまず帰路につくことにした――




