Section15
Lucerna
――今日で旅行の3日目!
ちょうど半分というところまでもう来てしまった。
なんだかいろいろ楽しくて、時間が過ぎるのが早いような気がする。
……さて、今日は旧ブロンシェルの首都、クォンツィアに行くんだよね。
そんなわけで、朝ご飯を食べた後すぐに宿を出てクォンツィア行きの電車に乗っている。
「ジル、クォンツィアまでどれくらいでつくの?」
「んーと、大体3時間半くらいかな。初日のときとあんまり変わらないと思う」
「早くつかないかなー!」
ティアナはよほどクォンツィアに行きたいみたい。
昨日も、なんかすごい思い入れがあるような感じだったけど、やっぱりクォンツィアには惹かれるものがあるんだと思う。
「じゃあ、また着くまでみんなでゲームでもしようか」
みんな暇なのを察したのか、ジルが提案する。
この前は大富豪だったけど、今日は何するんだろう。
疑問に思ったので、私はジルに聞いてみる。
「何のゲームするの?」
「そうだね、この前が大富豪だったから今日はポーカーでもやろうか」
……ポーカーって
ポーカーフェイスのあのポーカーだよね!
確か、フラッシュとかフルハウスとかが強いんだっけ……?
私がそんなことを考えていると、クレアがこの前と同じように聞いてきた。
「ねえルーシェ、ポーカーって何だっけ?」
クレアってあんまりトランプとか知らないのかな。
「ええと、とりあえずカードをそろえればいいと思う……!」
ちょっと適当に言ってみた。
いや、フォーカードとかだったらすごいけどね!
あながち間違ってない気がする。
「クレアはルール知らなかったらこれ見てくれれば大丈夫だと思う」
ジルがそういって、ルールが書かれた紙をクレアに渡した。
「あ、これ分かりやすい!ジルがこれ作ったの?」
「そうだよ、あ、ティアナも見る?」
「私ルール分かるよ!ポーカーだよね?」
どうやらティアナはルールが分かるみたい。
ラルフは……言うまでもなく知ってるみたいだった。
「またティアナの勝ち……」
……ティアナはトランプゲームに強いのかな。
この前の大富豪のときもティアナがずっと一番だったし。
本当にティアナって、変なところで変な能力持ってるよね……
ピアノとかも上手いらしいし、頭いいのかとかは分からないけど。
「はい、ルーシェちゃんの飴もーらい!」
「ティアナ、もうほとんどないんだけど……」
……ポーカーは本来ギャンブルに良く使われるゲームなので、私達は手持ちのお菓子をかけながら楽しんでいた。
だけど、ティアナばっかり勝つので、全部ティアナのところに行ってしまう。
(――本当にまったくなくなっちゃった……)
うぅ……ひもじい。
容赦なくティアナに徴収されてしまった。
「ルーシェちゃんかわいそうだからあげるよー!」
「……え?」
「はい♪これルーシェちゃんにあげるー!」
……天使がいた。
いや、正確には天使とは呼べないけど。
「ありがとう……ティアナ」
渡してくれるのはありがたいんだけど……それクレアのお気に入りだったわけで。
隣からすごく白い目で見られる……
「ルーシェ、そのクッキー私に分けてくれるよねー?」
目が怖いです、目が。
食べ物の恨み……というかお菓子の恨みは恐ろしい。
特にこの人は。
「う、うん。はい、どうぞー」
しぶしぶクレアにお菓子を渡した。
……渡したのはいいんだけど……
「うんうん、はいそれも頂戴ねー」
……何様!?
なんかせがんでくるので対抗してみることにした!
「……こ、これティアナにもらったやつだから、クレアに上げる義務はないよ」
「へぇー、そういうこと言うんだ。へぇー!」
怖い。
やっぱり渡そう、たぶんこのままだとクレアに殺されそうだし。
「や、やっぱりあげる……。私優しいからねー」
それを受け取ってクレアは言う。
「そうそう、それでいいのよそれで」
何様なのよ、本当に。
……お菓子のこととかになるとクレアは容赦ないなぁ。
とか、思っていたらティアナがまた――
「ルーシェちゃんお菓子なくなっちゃったからまたクッキーあげる!」
……。
勘弁してください本当に。
天使と悪魔に挟まれるような気分で、私は電車の中を過ごすのだった――