Section50
Lucerna
――ついた。
長い時間歩き続けたせいでもう足が痛い……けど。
「ここが僕の叔母の家なんだ、みんなお疲れ」
ジルがそう言って家の説明をする。
建物自体は新しい感じで、200年も前にあったであろうエルナとアルフォンスが住んでいた面影はなかった。
ティアナに少し事情を聴いてみようと思ったけど、歩き続けてすごくぐったりしてるから今はやめておこうかな。
お屋敷、という程大きくはないけど2人で住むにはちょっと大きすぎるくらいかも知れない。
……かくいうシエラももっと大きなお屋敷に住んでたけど。
「なかなかこんな奥地にあるなんて思わなかったわね……」
クレアさんですら疲れてしまったみたい。
一方のティアナはもっとどんよりしてるけどね。
「とりあえずみんな入って休もうか、テア叔母さん!」
テア叔母さんって言うのかな、そう言えば叔母さんの名前を聞かされてなかった。
「みんなよく来たね、さあ入って入って」
扉を開けて出てきたのは40歳くらいのおばさんで、とても優しいそうな人だった。
私たちはおじゃましますとテア叔母さんに声をかけながら家に入っていく。
「今日はまあ、その、いろいろあってここで演奏会をすることになっちゃったんだけど大丈夫だよね?」
どうやらジルは叔母さんと話をしてるみたい。
「大丈夫どころか大歓迎だよ、みんなにゆっくりして行ってもらってね」
「ありがとう、じゃああの、ピアノがある部屋を借りるよ」
ジルはそう言って足早に別の部屋へと向かっていく。
休んでいいとは言われたけどどこで休めばいいんだろう……
なかなかに広くてよくわからない。
「ルーシェちゃん、多分こっち!」
私がそうこうしているとティアナに話しかけられた。
もしかして部屋の場所とかは変わってなくて覚えてるのかな。
「ティアナ、この建物の間取りとかわかるの?」
疑問に思った私は思わず聞いてみてしまう。
「うーん、なんて言うんだろう?覚えてないんだけどなんとなくわかる感じ!」
「そうなんだ、で、ええとどこに行くの……」
なんとなくわかるっていうのはわかるかもしれないけど。
腕を引っ張らないでくださいティアナさん。
「多分ここ!」
引っ張られるがままにティアナに連れてこられた場所は一際目立つ扉だった。
なんとなくアンティークな、そう、200年くらい前のような。
「……ティアナ、ここは?」
「たぶんね、ここだと思う!」
質問に答えてくれなかったけどティアナは勢いよく扉を開けた。
……そして扉を開けた先に目に飛び込んだのは――
――古い一台のピアノだった。