Section48
Lucerna
――クォンツィアの駅に着いた。
やっぱりティリンからだとすごく遠い……
ひたすら電車に揺られながら半日かかるから仕方ないんだけどね。
それにしてもティアナと仲直りした時にコンサートをしようって言ったけど、よくよく考えれば2週間前まではピアノなんてほとんど最近は触ってなかった。
この前もそうだったけど、なんかコンサートが苦手だったんだよね。
……それも今なら、シエラのお父さんのことが原因だってよくわかるけど。
シエラの記憶を思い出して、ティアナとも喧嘩しちゃったけどよくわからなくてモヤモヤしていたことの原因がわかったのはよかったのかもしれない。
ピアノもそれで触ってなかったんだなって思うと納得がいくしね。
……でも案外2週間で何とか形になったから結構嬉しい。
(――これもティアナがいてくれたおかげかな……)
そんなことを考えると不思議と笑顔になれた。
って、何を考えてるんだろ私。
「……ルーシェ、また自分の世界に入っちゃってるけど大丈夫……?」
ぼーっとしてたらクレアに心配された!
「うん、何でもないよ、ちょっと考え事してただけ」
「何考えてるのか知らないけど、幸せそうだったから何よりね」
「……え、そんなに顔に出てた?」
「はっきりとね……」
そんなに私ニヤニヤしてたのかな。
クレアにはお見通しみたい、昔から。
でも、ちょっと恥ずかしくなった。
――そういえば、ジルの叔母さんの家ってどこなんだろう?
考えてみればエルナの所に行こうとしていたあの時も逃げることに精一杯でどこに向かってたのかもわからなかった。
ティアナなら場所を知ってるかもしれないので聞いてみる。
「ティアナ、ジルの叔母さんの家ってどこら辺なの?」
「ええと、ええと、この辺!」
そう言ってティアナが地図を指さす。
「……え、どこだろうここ」
すごく山の中、というか山なんですが……
って、あれ?
……よくみるとセリエ城って書いてある。
「お城……?」
エルナとアルフォンスってブロンシェルに来てからはお城に住んでたのかな?
でも、ラインブルクは元は白の国の貴族だったわけだしお城に住んでてもおかしくは……
「ルーシェちゃん違うよ~、このお城は当時から使われてなかったんだよ」
「あ、そうなんだ!びっくりした!」
なんか壮大な勘違いをしたみたい。
そこにジルがやってきて解説を付け加えてくれた。
「このお城、セリエ城は今から400年くらい前の城でかつては城主がこの地域一体を統治してたんだけど250年前の戦争で荒廃しちゃってそれからは無人の城なんだ」
「……そうだったんだ、てっきりアルフォンスとエルナが住んでたのかなって思っちゃった」
「僕たちが行くのはここ、確かに山のほうだけどなだらかで湖もある落ち着いたところだよ」
「ルーシェちゃんも行ったらきっと驚くと思う!!」
それは楽しみだなぁ。
ジルの話によると、バスで2時間ほどかかる場所らしい。
湖もあって落ち着いた場所っていうといいところのような気がする!
……それに、もともとシエラとマリエルもあの戦争から逃げてエルナとアルフォンスのところに行くつもりだった場所なんだもんね。
だから、200年も前のことかもしれないけどそこにいけるんだなって思うとワクワクする。
そんな期待を胸に寄せながら私たちはバスに乗り込んだ――