Section46
Gilles
あれからルーシェとティアナは仲良さそうに遊んでいる。
……なんだかんだで、仲直りしてくれてよかった。
まさかエルナ・ラインブルクとシエラ・エルスリールの記憶を持っているとは思わなかったけど……
と、そろそろ来たみたいだ――
「――待たせたな」
「ジル、遅かったじゃないか」
「もうー、ジルまた遅刻したー!」
「だからごめんって」
「もう……なにやってんのよ」
またいつもの日常が戻ってきた。
これから僕たちはブロンシェルのクォンツィアに向かう。
……ルーシェとティアナがアンサンブルをするというので僕たちはその鑑賞会をするというわけだ。
ティアナとルーシェはあれから2週間くらいでかなり特訓したらしく、自信があるように見える。
何はともあれ仲直りしてくれてよかった。
「そういえばティアナ、このパートどうする?」
「うーん、ここはこうしよう!」
「うんうん、そうしよう!」
やっぱりこの二人はこうしてるのが一番しっくりくるな……
そう思いながら僕たちはまた、電車に乗った――
――この前と同じように、クラクスを経由しながらブロンシェルへ向かう。
その道のりはやっぱり長くて、またみんなでゲームをしたりしながら時間を潰していた。
「クレアちゃん、クラクスのクレープ屋さんまた行こう??」
「あ、そうね!確かにまた行きたい」
「私今度は道に迷わないように方位磁石持ってきたんだよ!」
……ティアナ方位磁石だけあってもどうしようもないんだよ。
相変わらずティアナはティアナだった。
ちょっと口を挟んでみる。
「ティアナ、方位磁石だけじゃだめだよ」
「え??」
「山の中とかで道に迷うならまだわかるけど、都市の中だったらやっぱり地図を読める方がいいと思う」
そこまでいったところでクレアが口を挟んだ。
「……そうね、でも私もあれから地図とか読めるように勉強したしもう大丈夫だからね」
「……うぅ、私も地図読めるようになる!」
「はいはい、ティアナもクレアみたいに読めるように頑張ろうね」
「もうーすぐジルは私のこと馬鹿にして!」
(――ティアナももう少し大人になってくれるといいんだけど……)
まあ、そのうち大人になってくれると信じよう。
こんな他愛もない話も僕たちにとってはいい思い出になると思うし、逆に言えば今しかこんなふうに話せないかもしれない。
そしたら少しくらい子供でもいいかなと思ったりもしてしまう。
いずれにしても、今回はルーシェとティアナの演奏が楽しみだ。
そんな思いを馳せながら僕は電車に揺られることにした――