Section45
Lucerna
……やっぱりアルフォンスじゃなかった。
なんとなくそんな気はしてたいた、殺される直前はよく覚えていないけど、アルフォンスの部下という感じもしなかったし私自身信じたくなかった。
それでもクレアから聞かされたお父様とラインブルクの暗殺は驚いている。
まさかこんな複雑な事情が私の知らない間にあるなんて思いもしなかった。
――なんでこんな権利とか地位で殺し合わなければいけないの?
私は疑問に思う。
今でさえ、統一されて平和になって争いごとは少なくなったけど、やっぱりそういう権利とか地位とかの問題はいろんな場所で起きている。
複雑に絡み合って……すれ違って。
どうしてこんなにみんな優しいのに、争うんだろう……
そんな悲しい気持ちになりながら、ジルの指差すページをめくる。
……そのアルフォンスが綴ったページにあったのは、私が暗殺された悲しい理由だった。
『私も聞かされて驚いたがどうやら今ヴァイスハルトはアルジェントに戻りディクタベルトとアルジェントの内政についての権利で揉めているそうだ。
どうやらいっぱい食わされたらしい、ヴァイスハルトは最初から4家を排除してアルジェントに混乱を起こさせ独裁を目論んでいたのだ。
アルジェントに関わる重要な情報を知っている4家は暗殺の対象となった、ルフェーブル伯が対象から外れていたのはおそらくだが、ヴァイスハルトの元に最初からついていたからだろう。
私とシエラ嬢はもちろんエルナお嬢様までが狙われることになってしまった、これは完全に私の誤算だった。
さらに酷いことに、ディジスでの虐殺はシエラ嬢一人を狙ってのはずだったが混乱した傭兵たちが略奪と虐殺をしたという話だ。
……結果的にシエラ嬢は殺され、私とエルナお嬢様は暗殺を逃れブロンシェルに追放されたことになる。
シエラ嬢が殺されたのは本当に残念だ、私とエルナお嬢様も国外に逃げたものの、また追われる可能性も否めない。
このことはエルナお嬢様に伝えたいが、どう話したものだろうか――』
……日記はここで途切れて読めなくなっている。
(――自分の名誉とか地位とかそういうもののために私は殺されたの……?)
そう思うとすごく悲しくなる。
私が知っている文献では、ヴァイスハルト伯はその後アルジェントの内政を任されたそうだけど、結局……暗殺されたらしい。
なんだかそれもまた悲しい話なんだけど……
私は少し考え込んでしまう。
もやもやするというか、全ての謎は確かに解けたけどぱっと晴れないというか……
(――どうしたらいいのかな、ティアナとも仲直りできてないし……)
一通りこの日記を読み終えた一同はみんな黙り込んでしまった。
たぶん、それぞれ思うことがあるんだよね。
だったら、私は――
この記憶が前世のものとかわからないし、私だって思い出しくて思い出したわけじゃないけど……でも!
シエラがしたかったことを私も、今ティアナとしてみたいから。
……だから、正直にはっきり伝えよう。
「――ティアナ、コンサートもう一回やろう?」
「え??」
「私、シエラとしてでもルシェルナとしてでもあなたとアンサンブルしたいの、だめかな?」
ここで断られたらすごいショックだけど、諦めないで粘ろう。
と、思っていた私の予想とは裏腹にエルナは答えた。
「……うん、いいよルーシェちゃん。あのね、私も同じこと思ってたの」
意外な答えが帰ってきて少し驚く。
ティアナはてっきり許してくれないのかなって少し思っていたから。
「私も勘違いしてたんだと思う、あなたがシエラちゃんでもルーシェちゃんでもいいから一緒に演奏してみたいなって、今そう思ったんだ」
「ティアナありがとう!いろいろ本当に本当にごめんね……!」
気持ちが高ぶっちゃってかたことになっちゃってるけど気にしない!
それくらいティアナの気持ちが嬉しかった。
「……私こそごめんね、ルーシェちゃん、私変に意地張ってたのあの時のシエラちゃんと喧嘩しなければ――」
「ティアナ、もういいの、これからは一緒に楽しく過ごそう?」
もう悲しまなくていいの、過去のことで悲しむよりも未来のことを想像して楽しむ方がきっと幸せだとおもうしね。
一部始終を見ていたクレアとジルも微笑みながら私たちを見守っていた。
「じゃあティアナ、仲直りしてくれる?」
「……うん、仲直りっ」
「ちょ!わ!!」
ぎゅっとティアナに思いっきり抱きつかれて戸惑う。
ティアナはちっちゃくて軽くてかわいい
(――ってどこ触って……!!)
……そんなところにほっぺたすりすりしないでください、ティアナさん。
でもこうやって子供みたいにはしゃぐティアナを見て少し安堵した。
これからはまたこんなふうに楽しく過ごそう――