ファイル04 魔導具《マギ・ツール》と公爵令嬢 ~序章 Ⅱ~
と言う訳で、かなり時間があいてしまったのですが・・・4話です。
なかなか、話が進まなくてすみません。
今回もまだまだ戦闘や事件がおこりません・・・・(汗)
どうか今しばらく、お付き合いくださいませ。
アリスは今、ものすごく緊張している。
それは、義理の妹からの頼みが原因だった。
義理の妹のアルは、父からとても愛されていて。
だからアリスは、妹に逆らうことができなかった。
いつしか、アルの思いのままに動く諜報員として、仕立て上げられていた。
もちろん、アリス本人に、その自覚はない。
そうなるように、暗示をかけられているのだ。
今は、妹からの頼みで、ヒューイ達の動向を探っていた。
今日、ヒューイ達は、学校の帰りに、魔導用品店へと立ち寄るようで。
それを伝えたら、妹は、
「なら、そこで何をするのか、僕が通信魔導を姉上につけるから。
探ってきてよ」
などと、無理難題を突き付けてきた。
しかし、逆らえば何をされるか、分かったものではない。
仕方なく、ヒューイ達のあとをつけてみることにしたのだった。
そのころ、ヒューイ達は・・・・・。
あとをつけられてるなんて、ちっとも思わず、愉快な会話をしながら、大通りを歩いていた。
目的地は、おそらく(エレンの言葉が本当ならば)、魔導用品店だ。
魔導用品店とは、その名の通り、魔導に用いる道具を(ほぼ全て)販売している大きい店の総称だ。
ヒューイ達の通う、「王立・魔導学校」の近くには、それらの店も多くあり、その中でも、飛びぬけて大きいのが、「魔術用品店」である。
専門的すぎる物は、専門店に行かないと手に入らない場合もあるが、この英国一大きい「魔術用品店」ならば、他の店よりも品ぞろえも多く、ヒューイ達が学校で使う物ならば、充分すぎるくらい揃ってしまう。
その用品店を目指して、一行は大通りを歩いていた。
「ヤダっ!!
アンディってば、そんな中学生レベルの問題にも答えられなかったの?」
「そういうなって。
エレンとかヒューイは優秀だからいいけどよ・・・・。
俺はいつも、赤点との戦いだぜ!!
得意な分野の魔導術に関しては、結構いける気がするんだけどな」
と気持ちの良いくらいに潔い返事には、他の二人も苦笑を隠しきれない。
「アンディはそんなに、成績が良くないのか?」
とヒューイは気になったことを聞いてみる。
この中では、ヒューイだけが、今までのこの学年についてを知らない。
それにアンディは、
「おうよ。
俺は、ペーパーテストなら、下から数えた方が順位は読みやすかったぜ」
などと、普通な顔をして答えてくれる。
それにエレンは、
「まったく・・・・。
そんなんじゃ、この世界で魔導士として、生きてはいけないわよ?
まして、一般教養であの成績じゃあねぇ・・・・・」
あくまで、常識人の立場から、ツッコミを入れる。
それにヒューイは、
「そんなに悪かったのか?
そこまで悪い成績を取るようには見えないんだが・・・・」
などと言ってみる。
アンディは、
「おうよ!!
それよりも、ヒューイはどうだったんだ?」
とヒューイの成績を聞いてくる。
(正直、学年が一つ下だった人の成績を聞いて、役立つとは思えないが・・・・。)
と思いつつも、
「俺は・・・・・・」
ヒューイは自分の成績を言おうとする。
しかしそこに、エレンが乱入してきて、
「少なくとも、アンタよりはずっといいわよ」
と言う。
「そうだけどよ・・・。
そんなことねぇだろ?
得意分野に関しては、俺が一番だぜっ!!」
などと、エレンに対し、意味不明な答えを返すアンディ。
おそらくは、彼も、スチュアート家に多い特化型なのであろう。
それにしては、耳もほぼ左右対称なのだが・・・・。
そのやり取りで(薄々感づいてはいたが)、相当成績が悪かったようだとわかる。
ヒューイは、自分の成績について言うことを、遠慮しようとするのだが、
「なぁ、どうだったんだ?」
と、アンディは、なおも聞いてくるので、仕方なく答える。
「一般教養は全科目一位。
魔導学に関しては、理論・実技、魔導具に関する工学的分野など、全て教師達も文句なしの満点・・・・」
と。
それに2人は目を丸くして、驚きのあまり、固まってしまった。
これが、国からも注目されている天才の力だろうか・・・。
と、その3人へと掛かる声。
「ねぇ、そこの君達?
ちょっと、話を伺わせて貰ってもいいかしら?」
その声で、固まっていたアンディとエレンも、現実に復帰し、後ろを振り返る3人。
そこに立っていたのは、20代半ばに見える女性だった。
なかなかのプロポーションの持ち主で、そこらへんを歩けば、多くの男性を虜にしてしまいそうだが・・・・。
「おっと、自己紹介がまだだったわね。
私はヒルダ・レヴィよ。
記者をしているの。
それで今日は、例の天才君、ヒューイ・リードに取材を申し込みに来たんだけど・・・・・」
と言ってくる。
これが彼女の素かどうかはわからないが、とてもハキハキしていて、ボーイッシュな印象を抱かせる。
そんなヒルダはどうやら、飛び級をしたヒューイに、何かの取材を申し込んできているようだが。
ヒューイはもちろん、断ろうとして、
「すまない。
取材に関しては、断るようにと両親から固く言われてる。」
という。
それにアンディとエレンは、
「ええっ?!
そんなこと言わずに、うけよーぜっ!」
「そうよ!
少しくらいなら、いいんじゃない?」
と、執拗に言ってくる。
しかし、ヒューイはもちろん、受けるつもりも無く、
「いいや。
駄目だ」
とはっきりと断る。
しかしエレンは、
「だって、あの週刊誌『ヘブンス・ウィザード』のエース記者・ヒルダさんなのよ?
『ヘブンス・ウィザード』なんて、憧れの憧れよ?
取材を申し込まれるなんて、うらやましすぎるわ!!
なんで断るのよ?!」
と、まくしたててくる。
その表情や声からもわかるように、エレンはかなり興奮しているようで。
週刊誌『ヘブンス・ウィザード』とは、“魔導士の、魔導士による、魔導士の為の、専門雑誌”をモットーに創刊された雑誌である。
魔導に関わる者達からは、今のイチ押しや、知りたい情報が詳しく載っていると重宝されている。
とにかく人気雑誌なのである。
特に、この目の前にいるヒルダ・レヴィ記者の書く記事は、かなりの人気を博し、若い女子層からの支持も圧倒的に高い。
当の本人であるヒルダは、何の記者か言いあてられたことに、目を丸くして、
「あら。
私の事を言い当てる人がいるなんて、光栄ね」
と嬉しそうにはにかむ。
それでも、ヒューイは断ろうと、
「すまないが、僕は取材を受けられないんだ」
と言おうとしたのだが、その前にヒルダが思いついたように、
「じゃあ、取材はうけなくていいから、私もこの後、同行させてもらっていいかしら?」
と言ってくる。
ヒューイは、それも断ろうとしたのだが、エレンの視線が恐ろしいほどに怖いので、仕方なく、
「わかりました。
いいですよ。
でも、僕については何も探らないでください」
と念を押して、了承したのだった。
一方、このやり取りを見たアリスは、まだ、あとをつけていることがバレていないのに内心安堵しつつ、尾行を続けていた。
思わぬ横槍が入ったにせよ、一行の目的地は変わらないようだったので、目的地までの地図を脳裏に展開する。
目的地までは尾行するのに持ってこいの裏道が複数ある。
一体どの道から尾行をするか、より効率的な策を練る。
妹は、一定の成果を持って帰ればアリスを褒めて、いつも、
「ありがとう。
今日の姉上はすごく期待通りの働きだったよ。
今日のことは、父上にもよく話して、姉上のことをねぎらうように言っておくよ」
と、アリスが一番安心することを約束してくれる。
言うとおりにしていれば、妹は決してアリスのことを悪く言ったりしない。
だから、アリスは今、必死に妹の求めることをしようとしていた。
そんな彼女に背後から近づく影。
暗い裏道に一人の少女の行く末を暗示するかのような、耳障りな鐘が鳴り響いていた。
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また、素人が書いて居りますので、
「こう言う所を改善したらもっといいのに・・・」等、
ありましたら、なんでもお書き下さい。
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