表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
刹那  作者: するめ315
9/15

9

長らくお待たせしました。


ついに過去編完結です。

しかし、自分の中ではあんまり納得がいっていないので、今後も検討していくつもりです。

―――パリーン


運命のあの日、当時唯一の側室であったアメリアの部屋で、一つのものが壊れた。


華奢でかわいらしいガラスでできた白鳥の置物―――。


アメリアにとって愛する人……オルデロール・マクシオン=マクセスから生涯唯一、手ずから選び、渡された送り物であった――――。


***

オルは、パーティーの最中ずっと、本来の目的を忘れたかのように、熱心に雪那姫に視線を送り、視線に気づいてもらえると、今度は幾度もダンスに誘った。


その夜は、数回のダンスと少し長めの会話をし、姫が本来目的であった、穂澄国の皇女だと知ると、オルは笑みを深くし、そのまま雪那姫と別れた。


この時、オルの中では雪那姫を、王妃としてもらうことが決定していたのであろう。


セレナーデから帰ってきたオルは、ある意味常軌を逸していた。

それを、あの子は……アメリアは、本能で感じていたかもしれない。

アメリアの不安そうな顔が、これからのことを暗示しているようだった。


それから長いようで短い一月という月日が流れた―――。

ある日、アメリアは聞いてしまったのだ、オルが王妃を持とうとしていることを……。


オル自身から聞いていたら、事態は深刻にはならなかったかもしれない……。

きっとあの子も受け止めることができた。あの子は強い子だったから……。


しかし、あの子は聞いてしまったのだ、侍女たちの噂を、オルが熱心に求婚している姫がいるということを―――。


事実はあの子に『愛されていなかった』という絶望を運んだ。

両親のこと以来、あの子の心の支えは、ナーナ姫とオルからの愛だったのだから……。


その日を境に、少しづつ、少しづつ、アメリアはおかしくなっていったのだろう。


この時、オルが何かすればよかったと思う。

オルがしなくても、せめて私だけでも何かしてあげていたら……。


私達は目先のことにとらわれすぎていて、周りの……アメリアの変化になど気付きもしなかったのだ……。


私は、弟のような存在であるオルの希を叶えてあげたかった。


オルは、雪那姫を見てからというもの、雪那姫をなんとか自身に嫁がせようと四方八方に手を回していた。

或る時は、穂澄国へ書を送り続け、時に、圧力をかけることもいとわず。

また或る時は、大臣たちにも雪那姫との婚姻を認めさせるため、帝国に与える利益を説き、時には脅しともとれるような発言で、大臣たちに婚姻を認めさせたのである。


そして、時は瞬く間に過ぎていった。


オルの努力のたまものか、出会いからわずか3カ月で、半ば奪うような形をとりながらも、雪那姫との婚姻が、両国の間で決まったのである。



しかし、婚姻の決定は、オルの話を待ち続けたアメリアを、ますますおかしくさせた。

このころになって、ようやくアメリアの侍女があの子の変化に気がついた。


アメリアが、ナーナ姫を皇子扱いするというのだ。

オルと私は、急ぎアメリアのもとに行き、事態の重さに愕然とした。


オルに気付いたアメリアは、駆け寄り、ナーナ姫を見ながら美しい笑顔で言うのだ。


「陛下と私の皇子(みこ)ですわ。これで、晴れて私も王妃という立場になれますわ。」


気付いた時にはどうにもならないほどに、アメリアは壊れてしまっていた―――。

王妃という、オルにもっとも愛されるであろう立場への執着は、恐ろしいほどであった。


今まで気付かれなかったのは、ひとえに、元公爵令嬢としてのアメリアの振る舞いと、プライド故だったのであろう。


王宮医師の判断のもと、アメリアを離宮に移し隔離しようという話がでた。

しかし、これに反対する者がいた。

皇帝陛下オルデロール・マクシオン=マクセスその人であった。


オルは、アメリアについて深い罪悪感と、責任を感じていた。

『自分さえ勝手なことをしなければ……。』という思いがあったのであろう。


それに、幼いナーナ姫には母が必要だとも感じていた。

『自身の行いのせいで、ナーナから母を奪うわけにはいかない。』そんな決意もあったのだろう。


アメリアの生活は、周りがサポートをし、ナーナ姫とは距離をおかせ、会わせる際は監視付き、という形をとり王宮内に残すこととなった。


しかし、壊れたアメリアには、周りのサポートも、気遣いも、無意味だったというしかない。


アメリアは、徐々に食事をとらなくなり、少しづつ衰弱していった。


オルの婚姻が決定してからわずか7カ月という月日でアメリアは、儚く逝った。


しかし、国民はこの悲劇を知ることはない。側室の死など、伝えられることではないから―――。



アメリアの死からわずか2カ月後、王宮内に大きな傷を残したまま、オルと雪那姫の結婚式典が開催されたのである―――。


ここまで読んでくださった方、お疲れ様でした。and ありがとうございました。

楽しんでいただけたら幸いです。


このお話は、過去編の終了を物語の折り返し地点として予定していますので、今後は、完結に向けて頑張っていきたいです。


次回は、雪那王妃視点(?)の予定です。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ