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今回短めです。
バタン―――
行為が終わり、気絶するように意識を失った雪那を、丁重にベットに寝かせ医務室を出た。
「あんた何やってんの。自分が何したかわかってんの。」
「……。」
扉の横にはオリビアが腕を組んで立っていた。
話からすると何があったかわかっているらしい。
「家臣じゃなく、友人として忠告するわ。よく聞きなさい。」
「……。」
「王妃様は目覚めたばかりで、まだ体調が万全じゃないのよ、無理をさせて悪化させたらどうするの。責任もとれない癖に、馬鹿なことをしてるんじゃないわ。それに、私は、話をしなさいって言ったのよ。それがどういうことなの。説明しなさい。」
オリビアの言葉が、胸に響いた。
あまりに正論すぎて、何も言えなくなった。
そして俺は、逃げるようにその場に背を向けた。
「ちょっと、逃げるんじゃない。」
後ろでオリビアが騒いでいるが、聞こえないフリをした。
***
バタン―――
自室に戻ってきて改めて後悔が胸をしめる。
なぜ、あんなことをしてしまったのだろう。
頭では、雪那の体調が万全ではないことも、自分が雪那に無理を強いていることも分かっていた。
だけど……止められなかった。
突き飛ばされ、拒絶の言葉を雪那の口から聞いた瞬間、頭の中で何かが切れ、カッとなった。
俺はただ……ただ…雪那の無事を肌感じたかっただけなのに、拒絶された―――。
そのあとはもう、今までたまっていた雪那への伝わらない思いに押しつぶされてしまった。
気付いた時にはもう、すべてが終わっていた。
引きちぎられたように脱がされている雪那の夜着。
乱れたシーツ。
身体を濡らす汗と吐きだした欲。
気絶した雪那の頬に伝う涙―――。
もう、すべてが遅かった。弁解などする余地もなかった。
怒りに任せた後に襲ってきたのは、言いようもない後悔の念。
こんなことがしたかったんじゃない。こんなことのために雪那をもらったのではない。3年も仮面夫婦のような生活をしたのではない。
雪那に愛され、家族3人ごく普通の生活がしたかっただけなのに……。
後悔を今頃いくらしても遅いことはわかっているが、せずにはいられない。
一体俺はどこで道を間違えたのだろう……。
そして俺は、余りある後悔の中、一つの決意を新たにする。
雪那に近づかない。
せめて、雪那の体調が万全になるまでは、雪那に近づき、触れるのはよそう。
雪那だってあんなことをされた後に、触れられたくなどないだろうから―――。
意識がないはずなのに、涙を流す顔など見たくないから。
しばらく、もしかしたら永遠になるかも知れないが、近づくのはやめよう。
遠くからでも君を見ることができたなら、きっと俺は幸せになれるはずだから―――。
こんなヘタレ陛下を好きになってくれる方は居るんでしょうか…。
次回は、予定通り宰相オリビア・テローム視点で、過去編に行きたいです。
ここまで読んでくださった方ありがとうございます。