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刹那  作者: するめ315
3/15

3

今日3度目のベールへ感謝を抱きながら、別のことを考えていた。

国民に手を振りながら考えているのは、ナーナ姫に王位継承をさせる方法だった。


陛下は今現在、妃も側室も持たれてはいらっしゃらない。

しかし、私が嫁いで今日で3年たつのだ。

そろそろ貴族や大臣、果ては他国から、妃を持つべきだという声があがってもおかしくはない。

陛下が決められたことに、否をとなえることは誰にもできない。


今までは私だけだった。

私が妊娠をしないように、細心の注意を払えばよかった。

しかし、他の妃を持ったらそうはいかない。


妃が産むのが皇女ならいい。皇女なら第一子のナーナ姫に王位継承権がある。

でも、皇子なら……王位継承権は皇子にいってしまう。

それでは、この3年間の苦労が水の泡になってしまう。


私の苦労、それは―――避妊薬を飲み続けること。


この3年間誰にもわからないように、毎日飲み続けてきた。

ナーナ姫にも、侍女にも、大臣の方々にも、もちろん陛下にも―――。


私が生まれた国は、帝国よりもずっと東に位置している。国では、医学や薬学などに関することが発達していた。

また、王族は医学や薬学を学ぶ決まりがある。本来は、私欲に使うために学ぶのではない。戦や天災で傷ついた民を助けるために学ぶのだ。

私欲のために使うことを許してほしい。いや、これは私欲などではない。

ナーナ姫果ては陛下のため―――。


陛下も感じているはずだ。愛してもいない女との間に生まれた皇子に国を継がせるよりも、今も愛し続けている、女性との間に生まれた皇女に、国を継がせたいと。

そしてそれが、王妃として私にできるあの方への贈り物。


思考に浸っていたその時、視界の隅に一瞬光るものが見えた。広場に集まっている民の装飾品の類だろうか。気になって目を向けた。


考えるよりも先に体が動いた。

いつの間にかナーナ姫を抱き上げていた陛下を突き飛ばし、ナーナ姫を胸にかばった。


ドス―――

キャー―――


背中に矢が刺さる衝撃を感じた。瞬間、民たちの悲鳴が聞こえる。

背中が熱い。燃えているようだ。


「……お……おかあさま……。」

「……なんですか、ナーナ姫……危ないですから…お父様や近衛兵といっしょに、王宮の中に入りましょう。近衛兵の方々、しっかりしてください。陛下と皇女を王宮内へ。」

「か……かしこまりました。陛下、皇女様こちらへ。」

「王妃様もお早く宮殿内へ。」

「い…いえ。すみませんが肩を……かしていただけますか。」


近衛兵の肩をかり、私は再びバルコニーに立った。


「……国民の皆さん、ご心配をおかけしました。私は大丈夫ですから……皆さんもお早く非難をなさってください。ここは危険かもしれません……。」

「王妃様お早く。」

「は…い。では、皆さん本当にご迷惑をおかけしました。」


バタン―――


扉から中に入り扉が閉まった瞬間、視界が暗くなり倒れた。


「王妃様。王妃様。早く医師をお連れしろ―――。」

「おかあさまー。」


ナーナ姫の泣き声や周りの声を遠くに聞きながら、私は意識を失った―――。


ここまで読んでくださった方、ありがとうございます。


次回は皇帝陛下、オルデロール・マクシオン=マクセス視点いきたいと思ってます。

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