13
なんとか12時に間に合いました。
楽しんでいただけると幸いです。
宰相殿にわかっててしまったら、帝国の吉事として大々的に取り上げられてしまう。そうなってはもう逃げられない―――。
「お願いします。このことは誰にも言わないで!!迷惑をかけないようにしますから……。お願いですから言わないで……。」
「…………床に座っていてはお体にさわります。どうか長椅子のほうへ……。」
宰相殿に支えられながら立ち上がり、長椅子に腰を下ろした。
「お願いします。宰相殿、いえ、オリビアさん、どうか誰にも言わないでください。」
「……しかし、王妃様これは帝国の未来がかかった出来事なんですよ……。」
「……いいえ、この子がどんな性別であろうと帝国を継がせる気はありません。」
「!!!何を言っているんですか。あなたはこの国の王妃なのですよ。」
「出ていきます。」
「!!!」
「私はよいのです。あの方に愛されなくても……愛していたから……。でも、子供に親に愛されない悲しみを味あわせたくない。」
「…………王妃様、あなたとオルはもっと話し合う時間が必要です……。」
「いいえ、もう必要ないのです。必要とされていないのです。だって、あの方は3月も会ってくれないのです。」
「それは……仕事が……。」
「違うんです。ナーナ姫にはあっているそうです。……あんなことをしてしまったから……もう私の顔など見たくないに決まっています。」
「王妃様…………。」
耐えきれなくなり、私は嗚咽を吐きながら泣いた。
コンコン―――
急なノック音がした。声を平時戻す間もなく扉が開いた―――。
キィ―――
「……おかあさま…ナーナです。おからだはたいじょうぶですか?」
「ナーナ姫……。」
「おかあさま!!!なんでないていらっしゃるんですか?どこかいたいんですか?なにかやなことがあったんですか?だれかにいじめられたんですか?」
ギュッ―――
思わずナーナ姫を抱きしめた。
「おかあさま……?」
すごく、すごく、嬉しかった。
本当の母ではないのに、ひたむきに愛してくれることが、この子の愛があれば私はきっと頑張ることができる。
あの方に愛されなくても頑張れる。そう確信することができた。
だけど今の私には腹の中に子がいる。
ナーナ姫のためにも、この子のためにもここにいるべきではない。
それに―――愛されなくても……愛しているから、あの方の愛し子に国を継いでほしい。
「どこも痛くないし、誰にもいじめらてないわ。ただ……少し悲しいことがあっただけ。でも、ナーナ姫がきてくれたから、悲しさなんてどこかに行ってしまったわ。」
「ほんとうですか?」
「ええ、ほん―――」
「いいえ、王妃様はいじめられたんです。皇帝陛下に。」
私の言葉を遮って、宰相殿がナーナ姫に語りかけた。
「おとうさまが!!!たとえ、おとうさまであっても、おかあさまをいじめるものは、ナーナがこらしめます。」
「ナーナ姫の協力があれば、簡単にこらしめることができますよ。」
「もちろんきょうりょくします。」
あっけにとられているうちに、会話は私をおいて進んでいる。
「私は、王妃様をいじめた奴からしばらく王妃様を隠したいのですよ……。」
「おかあさまをかくすことが、おとうさまをこらしめることになるのですか?」
「ええ、効果大でしょうね。」
宰相殿がほほ笑んだ。
「う~ん。あ、ナーナのおしろをつかってください。」
「……お城……?」
「よろしんですか、ナーナ姫。」
「もちろんです。おかあさまをいじめるなんてゆるせません。」
「では、使わせていただきますね。」
私の疑問には誰も答えてくれぬまま、話がまとまったようだった。
「……あの……。」
「王妃様、ナーナ姫は王都からしばらく行ったところに、自身の離宮をお持ちです。管理は我が侯爵家がになっていて、たとえ皇帝であろうとも、そう簡単に内情を知ることはできません。」
「え……。」
「しばらく、そこに身をおかくしください。あなたにも、オルにも、距離を置いて考える時間が必要です。手配は私が行っておきます。」
***
その話から3日後の夜、裏門からひっそりと王宮から離れた―――。
匿った人はナーナ姫が場所提供。知識提供は宰相のオリビアでした。
女3人集まると姦しい感じになりましたね……。
次話もがんばりますので、お付き合いよろしくお願いします。