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長らくお待たせいたしました。
何とか年内にUpできてよかったです。
医務室での出来事から3月という月日がたった。
その間一度も、陛下の訪れはなかった。
初めの1月は、毒の向けきらない私の身体を心配してくれて訪れないのだと……。
2月目は政務に戻った私が慣れるまで待っていてくれているだと……自分に言い訳をした。
3月目は……言い訳するのをやめた。
考えてみれば、陛下が訪れないのはもっともな話だ。
愛してもいない王妃に……情けをかけてやっているお飾りの王妃に、拒否されたのだから。
理由があったしろ、あんな対応では、陛下が虚仮にされたと感じてもおかしくない。
私は捨てられたのだ。
愛する人に、愛している人に、自分勝手な理由で拒絶し・・・・・・。
なんて滑稽な話だろう。まるで道化の様。
愛しているがゆえに、愛されたいがゆえに行ってきた行為のために、情けすら失うだなんて・・・・・・。
幸せな思い出だけを胸に、私の存在の一切が消えてしまえばいい。そうしたら、陛下の手を煩わせることがなくなるのに・・・・・・。
そんな思いをかかえながらも、出会ったことに、仮面夫婦であろうと、陛下と結婚できたことに後悔だけはしていなかった―――。
***
私は、婚礼の式典のわずか1日前にマクセス帝国入りを果たした。
正直、マクセス帝国からの婚礼の申し込みは驚いた。しかし、純粋に嬉しかった。あの方の元に嫁ぐことができるなんて、言い表すことのできない幸せだった。
けれど、そのときから感じていた。僅かにではあるが王宮内の空気の重たさを、勤めているものの暗い表情を、ほんのわずかではあるが感じていたのだ。
そんな空気の中でも・・・…いや、そんな空気を感じさせないかのごとく、婚礼の儀は華やかに執り行われた。
私が王宮内の空気の正体を知ったのは、婚礼から1月以上たったときであった。
王宮内の探検もかね、侍女がいないうちに庭園内の散歩に出かけた私は、噂話を耳にした。
内容は、当時1歳を過ぎた王位継承権第1位を持った皇女の、ナーナ姫の話しであった。
「アメリア様が亡くなって、今は誰が皇女様の面倒を見ているんだ。」
「宰相様の指示の元、乳母や侍女が交替で見ているらしいぞ。」
「そうなのか・・・・・・。皇女様もお可哀想に・・・わずか1歳で母親をなくしたのだから・・・・・・。」
「そうだな・・・・・・。王妃様が皇女様を受け入れてくれるとよいのだが、未だに会っていないようだ。」
「・・・・・・そうか・・・・・・。」
「まぁ、王妃様も戸惑っているのであろう。まだお若いのに、急に子供ができるなんて、誰だって悩むさ。」
「・・・・・・それもそうだな。」
「それに、王妃様は国もとでかなりの人格者だったと聞いたぞ。きっと皇女様の母になってくれるさ。」
物陰でこの話を聞いて愕然とした。
私は、陛下に皇女がいらっしゃることを聞いていなかった。知らなかったのだ。
***
気がついたら部屋に戻っていた。
しかし、どうやってあの場を離れたのか、どうやって戻ってきたのか、一切の記憶がなかった。
ただ、ただ、ショックだった。
望まれた婚姻のはずだった。それなのに陛下のは皇女がいた。しかも、皇女の存在を教えてくれなかった。皇女を害するとでも考えられたのであろうか。
飛躍しているとは思うが、伝えられなかった事実が、陛下の私への信頼を表しているようで・・・・・・。
けれどいつまでもここにとどまってはいられない。
皇女の情報を集めなければ。皇女にお目通りができるようにしなくてわ。
母としての役目を一刻も早く果たさねば。
そんな思いから皇女について調べ、その母、アメリア様について知った。
没落した家の娘を娶り、アメリア様のことを、その家族を守ろうとするほどに、陛下は愛しておられたのであろう。
その証拠が皇女様であり、悲しみに沈んだ王宮の空気なのであろう。
私では、とても代わりを務めることなどはできない。けれどせめて、陛下に亡き人への思いを貫かせることが、私にできる唯一であろう―――。
今日はもう一回Upする予定です(心が折れなければ)。