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刹那  作者: するめ315
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長らくお待たせいたしました。

何とか年内にUpできてよかったです。

医務室での出来事から3月という月日がたった。


その間一度も、陛下の訪れはなかった。


初めの1月は、毒の向けきらない私の身体を心配してくれて訪れないのだと……。

2月目は政務に戻った私が慣れるまで待っていてくれているだと……自分に言い訳をした。


3月目は……言い訳するのをやめた。


考えてみれば、陛下が訪れないのはもっともな話だ。


愛してもいない王妃に……情けをかけてやっているお飾りの王妃に、拒否されたのだから。

理由があったしろ、あんな対応では、陛下が虚仮にされたと感じてもおかしくない。


私は捨てられたのだ。


愛する人に、愛している人に、自分勝手な理由で拒絶し・・・・・・。


なんて滑稽な話だろう。まるで道化の様。


愛しているがゆえに、愛されたいがゆえに行ってきた行為のために、情けすら失うだなんて・・・・・・。


幸せな思い出だけを胸に、私の存在の一切が消えてしまえばいい。そうしたら、陛下の手を煩わせることがなくなるのに・・・・・・。


そんな思いをかかえながらも、出会ったことに、仮面夫婦であろうと、陛下と結婚できたことに後悔だけはしていなかった―――。


***


私は、婚礼の式典のわずか1日前にマクセス帝国入りを果たした。


正直、マクセス帝国からの婚礼の申し込みは驚いた。しかし、純粋に嬉しかった。あの方の元に嫁ぐことができるなんて、言い表すことのできない幸せだった。


けれど、そのときから感じていた。僅かにではあるが王宮内の空気の重たさを、勤めているものの暗い表情を、ほんのわずかではあるが感じていたのだ。


そんな空気の中でも・・・…いや、そんな空気を感じさせないかのごとく、婚礼の儀は華やかに執り行われた。


私が王宮内の空気の正体を知ったのは、婚礼から1月以上たったときであった。


王宮内の探検もかね、侍女がいないうちに庭園内の散歩に出かけた私は、噂話を耳にした。


内容は、当時1歳を過ぎた王位継承権第1位を持った皇女の、ナーナ姫の話しであった。


「アメリア様が亡くなって、今は誰が皇女様の面倒を見ているんだ。」

「宰相様の指示の元、乳母や侍女が交替で見ているらしいぞ。」

「そうなのか・・・・・・。皇女様もお可哀想に・・・わずか1歳で母親をなくしたのだから・・・・・・。」

「そうだな・・・・・・。王妃様が皇女様を受け入れてくれるとよいのだが、未だに会っていないようだ。」

「・・・・・・そうか・・・・・・。」

「まぁ、王妃様も戸惑っているのであろう。まだお若いのに、急に子供ができるなんて、誰だって悩むさ。」

「・・・・・・それもそうだな。」

「それに、王妃様は国もとでかなりの人格者だったと聞いたぞ。きっと皇女様の母になってくれるさ。」


物陰でこの話を聞いて愕然とした。


私は、陛下に皇女(おこ)がいらっしゃることを聞いていなかった。知らなかったのだ。


***


気がついたら部屋に戻っていた。

しかし、どうやってあの場を離れたのか、どうやって戻ってきたのか、一切の記憶がなかった。


ただ、ただ、ショックだった。


望まれた婚姻のはずだった。それなのに陛下のは皇女がいた。しかも、皇女の存在を教えてくれなかった。皇女を害するとでも考えられたのであろうか。


飛躍しているとは思うが、伝えられなかった事実が、陛下の私への信頼を表しているようで・・・・・・。


けれどいつまでもここにとどまってはいられない。

皇女の情報を集めなければ。皇女にお目通りができるようにしなくてわ。

母としての役目を一刻も早く果たさねば。


そんな思いから皇女について調べ、その母、アメリア様について知った。

没落した家の娘を娶り、アメリア様のことを、その家族を守ろうとするほどに、陛下は愛しておられたのであろう。

その証拠が皇女様であり、悲しみに沈んだ王宮の空気なのであろう。


私では、とても代わりを務めることなどはできない。けれどせめて、陛下に亡き人への思いを貫かせることが、私にできる唯一であろう―――。

今日はもう一回Upする予定です(心が折れなければ)。



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