表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
清掃員異世界転生_封水の勇者 ~俺の清掃スキルが異世界の穢れを祓うまで~  作者: もしものべりすと


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

7/40

第七話 リーネとの出会い

王都への旅は、三日かかった。


誠一は、聖王国軍の護衛を受けながら、馬車で移動した。リーネも同行している。クラウド村の復興には軍の一部が残り、誠一が浄化した井戸を中心に、少しずつ日常を取り戻しつつあった。


「王都は、初めてですか?」


馬車の中で、リーネが聞いた。


「ああ。というか、この世界で村以外の場所を見るのは初めてだ」


「きっと驚きますよ。王都ルミナスは、大陸で最も美しい都市と言われています」


リーネの目が、キラキラと輝いていた。故郷を語る喜びが、そこにはあった。


「でも、俺みたいな者が王様に会って、大丈夫なんですか?」


「大丈夫ですよ。父上——国王陛下は、身分にこだわらない方です。それに、セイは村を救った英雄です」


「英雄って言われても、ピンとこないな……」


誠一は苦笑した。


十五年間、「使えない老害」と呼ばれてきた人間が、英雄。


現実感がなかった。




王都ルミナスは、確かに美しかった。


白い石造りの城壁が都市を囲み、その中心には巨大な王宮がそびえている。城壁の外側には市場が広がり、人々の活気に満ちていた。


「すごいな……」


誠一は、馬車の窓から街並みを眺めた。


だが、清掃員の目は、別のものを捉えていた。


路地裏のゴミ。排水溝から漂う悪臭。建物の壁に付着した黒ずみ。


「……汚いな」


「え?」


「いや、何でもない」


誠一は口をつぐんだが、心の中では考えていた。


この都市も、清掃が必要だ。見た目は華やかでも、衛生状態は決して良くない。瘴気汚染がなくても、このままでは病気が蔓延するリスクがある。


職業病だな、と誠一は自嘲した。




王宮は、街の中心にあった。


白亜の城。青い屋根。金色の装飾。まるで、おとぎ話に出てくるような建築だ。


「ようこそ、王宮へ」


城門で、一人の騎士が出迎えた。


「私は近衛騎士団長のガルド。セイ殿を、国王陛下の御前にお連れする役目を仰せつかっております」


「よろしくお願いします」


誠一は頭を下げた。


ガルドは四十代の屈強な男で、厳格な雰囲気を纏っていた。だが、誠一を見る目には、敵意よりも好奇心が勝っていた。


「村を救ったという話は聞いております。浄化師としての腕前、期待しておりますぞ」


「……精一杯努めます」


リーネが横に並んだ。


「ガルド殿、父上は——」


「国王陛下は、謁見の間でお待ちです。さあ、参りましょう」




謁見の間は、想像以上に広かった。


天井は高く、巨大なシャンデリアが光を放っている。両側には貴族や騎士たちが並び、その視線が誠一に集中していた。


正面には、玉座。


そこに座っているのが、聖王国国王——アルベルト三世だった。


五十代半ばと思われる、威厳のある男性。銀色がかった髪と、深い青の瞳。リーネと似た面差しだった。


「そなたが、クラウド村を救った浄化師か」


国王の声が、謁見の間に響いた。


「はい、陛下。汐見誠一と申します。——セイ、とお呼びください」


「セイか。変わった名だな。しかし、異界からの来訪者とあらば、それも当然か」


国王は、誠一を見つめた。


「娘から話は聞いておる。そなたは、井戸の瘴気を一瞬で浄化し、さらには村全体をゾーニングで守ったと」


「一瞬とは言い過ぎですが……」


「謙遜か。よい心がけだ」


国王が立ち上がった。


「セイ。そなたに『聖浄師』の称号を与える。これは、かつて聖王国に存在した浄化師の最高位だ。百年以上、この称号を持つ者はいなかった」


どよめきが広がった。


「聖浄師だと……?」


「あの伝説の……?」


貴族たちがざわめく中、国王は続けた。


「そなたには、この国の浄化を任せたい。瘴気汚染は、年々深刻さを増しておる。このままでは、聖王国は瘴帝国に飲み込まれてしまう」


「陛下……」


「引き受けてくれるか?」


誠一は、一瞬躊躇した。


聖浄師。最高位の浄化師。それは、大きな責任を伴う称号だ。


だが——


「誰かがやらなきゃ、汚れは消えない」


母の言葉が、脳裏に浮かんだ。


「……お引き受けします」


誠一は、頭を下げた。


「ただし、条件があります」


「何だ?」


「俺を『様』や『殿』と呼ばないでください。俺は、ただの清掃員です」


国王は、一瞬目を丸くした。


それから、大きく笑った。


「ハハハ! 面白い男だ! よかろう、セイ。そなたの条件を受け入れよう」


こうして、誠一は「聖浄師」の称号を得た。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ