第三十七話 最終決戦・前編
光が、祭壇全体を包み込んでいく。
だが——
「くっ……!」
誠一は、苦悶の声を上げた。
封印の修復が、進まない。何かが、邪魔をしている。
「何が——」
目を開けると——
穴の奥から、さらに巨大な存在が這い出てきていた。
「これは……」
他の魔物とは、明らかに格が違う。
禍々しい気配。圧倒的な存在感。そして——
「魔王……なのか……」
穴から現れたのは、魔王の「腕」だった。
まだ全身は出てきていない。封印が、かろうじて魔王の本体を押さえ込んでいる。
だが、その腕だけで——
「がはっ……!」
黒崎が、吹き飛ばされた。
魔物たちを相手にしていた黒崎に、魔王の腕が襲いかかったのだ。
「黒崎!」
「構うな、汐見……! 封印を……!」
黒崎は、血を吐きながら叫んだ。
「俺のことより……世界を……!」
「……くそっ!」
誠一は、歯を食いしばった。
封印に集中しなければならない。だが、魔王の腕が、誠一にも迫っている。
「浄化……!」
片手で光を放ちながら、もう片手で封印を修復する。
だが、両方を同時にやるには、力が足りない。
「まずい……このままじゃ——」
その時。
「セイ!」
声が、聞こえた。
振り返ると——
「リーネ! それに——」
聖浄班の全員が、穴の中に飛び込んできた。
「遅くなってすみません!」
リーネが、誠一の隣に立った。
「王都の防衛戦が終わって、すぐにこちらに——」
「来てくれたのか……」
「当たり前です。仲間を、置いていくわけがありません」
リーネは、誠一の手を取った。
「私の力も、使ってください」
「リーネ……」
「一人じゃ、できないこともある。でも、仲間がいれば——」
リーネの体から、金色の光が溢れ出した。
「できないことなんて、ありません」
他の聖浄班のメンバーも、誠一の周りに集まった。
「俺たちも、手伝います」
「老師の遺志を継ぐんです」
「この世界を、守りましょう」
全員の力が、誠一に流れ込んでいく。
「……みんな」
誠一は、涙を流しながら微笑んだ。
「ありがとう」
そして——
「行くぞ」
誠一は、祭壇に向き直った。
「封水——全力展開!」
かつてない規模の光が、祭壇から放たれた。
七つの封水点が、光で繋がっていく。世界を覆う結界が、再構築されていく。
「馬鹿な……!」
魔王の腕が、暴れ狂った。
だが、聖浄班のメンバーが、それを食い止めている。
「押さえろ! セイ殿が封印を完成させるまで!」
「了解!」
ライオネルを中心に、騎士たちが魔王の腕に立ち向かった。
「もう少し……あと少しで——」
封印が、九割方完成した。
だが——
「させるか……」
魔王の声が、轟いた。
穴の奥から、さらに腕が伸びてきた。二本目の腕だ。
「くっ……!」
騎士たちが、二本目の腕に吹き飛ばされていく。
「みんな!」
「気にするな、セイ!」
リーネが叫んだ。
「封印を完成させて! 私たちが、時間を稼ぐ!」
リーネが、金色の光を放った。魔王の腕が、一瞬だけ怯む。
「今です!」
誠一は、最後の力を振り絞った。
「封水——完全復元!」
光が、世界を包み込んだ。




