第三十四話 仲間の犠牲
王都の地下。
リーネが倒れた後、ゴルド老師が封水点の防衛を引き継いでいた。
「老師、敵の第二波が来ます!」
ライオネルが叫んだ。
「数は……百以上!」
「くっ……こんな老体に、無理をさせおって」
ゴルド老師は、杖を握りしめた。
先ほどの戦いで、聖浄班の騎士は半数が戦闘不能になっていた。残りの戦力では、百人の敵を相手にするのは厳しい。
「ライオネル、リーネ王女を連れて撤退しろ」
「しかし、老師——」
「儂が、時間を稼ぐ」
「そんな——」
「行け!」
ゴルド老師の声が、通路に響いた。
「封水点を守ることが、最優先じゃ。儂一人が犠牲になっても、封印さえ維持できれば——」
「老師……」
「セイに伝えろ。『封水の儀の完成を、お主に託す』と」
ゴルド老師は、笑みを浮かべた。
「五十年、研究を続けてきた。その成果を、セイが受け継いでくれるなら——儂の人生に、悔いはない」
「老師……!」
「行け! 早く!」
ライオネルは、涙を流しながらリーネを抱え上げた。
「必ず……必ず、セイ殿に伝えます……!」
「頼んだぞ」
ライオネルが、撤退していく。
ゴルド老師は、一人で敵に向き直った。
「さあ、来い。この老いぼれが、相手をしてやる」
敵の第二波が、なだれ込んできた。
ゴルド老師は、最後の力を振り絞った。
「封水——最終結界!」
眩い光が、通路全体を包み込んだ。
結界が形成され、敵を完全に遮断する。だが、それはゴルド老師自身の命を代償とした術だった。
「これで……時間が稼げる……」
ゴルド老師は、ゆっくりと倒れた。
「セイ……頼んだぞ……この世界を……守ってくれ……」
その言葉を最後に、ゴルド老師は息を引き取った。
遠く離れた戦場で、誠一は突然、胸に鋭い痛みを感じた。
「……老師……?」
何かが、失われた感覚。
通信装置から、ライオネルの声が聞こえた。
『セイ殿……ゴルド老師が……』
「……わかった」
誠一は、目を閉じた。
悲しみが、胸を締めつける。だが、今は——
「老師の遺志は、俺が継ぐ」
誠一は、黒崎を見据えた。
「この戦い、終わらせる」




