第二十四話 現場の判断
王都の地下は、複雑な迷宮のような構造をしていた。
古代に造られた地下水路が、蜘蛛の巣のように張り巡らされている。その奥深くに、封水点がある。
「こっちだ!」
誠一は、ゴルド老師から教わった道順を辿って進んだ。
戦闘の音が、近づいてくる。剣がぶつかる音、魔法の爆発音、そして——叫び声。
「老師!」
誠一が叫んだ。
角を曲がると、戦場が広がっていた。
ゴルド老師とミラ、そして護衛の騎士たちが、黒い鎧の兵士たちと戦っている。瘴帝国の精鋭部隊だ。数は三十人ほど。
「セイ!」
ミラが、誠一に気づいた。
「来てくれたか!」
「状況は!」
「封水点は、まだ無事だ! だが、敵の数が多い!」
誠一は、瞬時に状況を判断した。
敵は三十人。こちらは、誠一を入れて十名弱。数では劣るが——
「ゾーニングで、戦場を分断する!」
誠一は、地面に手を当てた。
「封水——壁!」
青白い光が走り、地面から光の壁が立ち上がった。敵の部隊を、二つに分断する。
「今だ! 各個撃破しろ!」
騎士たちが、分断された敵に襲いかかる。数の優位を失った敵は、次々と倒されていく。
「さすがじゃな、セイ」
ゴルド老師が、息を切らせながら言った。
「『現場の判断』というやつか」
「清掃の仕事では、よくあることです。予定通りにいかないことの方が、多いですから」
誠一は、残りの敵に向き直った。
「浄化!」
光が放たれ、敵の瘴気を払っていく。強化兵士たちは、瘴気を失うと急激に弱体化した。
数分後。
敵部隊は、全滅していた。
「終わったか……」
誠一は、深く息をついた。
だが、その安堵は長くは続かなかった。
「セイ、見てくれ……」
ミラが、通路の奥を指さした。
そこには——
「封水点が……」
封水点の祭壇が、黒い靄に包まれていた。敵の攻撃で、封印が破られかけている。
「まずい……」
誠一は、祭壇に駆け寄った。
封印の状態を確認する。亀裂が入り、瘴気が噴き出している。このままでは、数時間で完全に崩壊する。
「修復できるか……?」
「やるしかない」
誠一は、両手を祭壇に置いた。
だが、その瞬間——
「させないよ」
背後から、声がした。
誠一は振り返った。
そこに立っていたのは——
「黒崎……!」
クロス将軍。黒崎剛史。
黒いローブを纏い、不敵な笑みを浮かべている。
「よお、汐見。また会えたな」
「お前、いつの間に——」
「部下に任せておいたんだが、お前が来ると聞いてね。自分で出向くことにした」
黒崎が、一歩前に進んだ。
「俺とお前、ここで決着をつけようじゃないか」




