(番外編)ユリウスの休日
朝から、ヴァレンティン公爵邸は騒がしかった。
父上と継母のエリス母上が、また人前で抱き合っているのだ。
「レオニードさま〜、今日はもう少し休んでいてくださいませ」
「……皆が見ている前で甘えないでください、殿下」
「いやですわ」
末っ子気質の甘えっ子ぶりは、子供が四人になってもまったく変わらない。
父上も呆れた顔をしながら結局受け入れているから、なおさら手に負えない。
「はぁ……」
ユリウスは額を押さえ、ため息をひとつ。
「今日は……シャイン公爵家に行こう」
***
館に着くと、すぐに弟や妹たちが飛びついてきた。
「ユリウスお兄ちゃん!」
「一緒に遊んで!」
相変わらず元気いっぱいだ。
けれど、不思議と嫌な気はしない。
母――セリシアが笑顔で迎えてくれるからだ。
「ユリウス、来てくれて嬉しいわ。ちょうどスコーンを焼いたの」
テーブルの上には、焼き立ての香ばしいスコーン。
バターと南国フルーツのジャムが添えられていて、甘酸っぱい香りが広がる。
「……母上のスコーンは、世界一だ」
ユリウスは思わず頬を緩めた。
弟妹たちと一緒にスコーンを頬張り、笑い合う。
お腹が満たされたあとは、母上に毛布を掛けられて昼寝。
母上の精霊の黒猫と僕の精霊の子グマが足元で丸まり、心地よい温もりが広がっていく。
――父上とエリス母上がどれほどラブラブでイチャイチャしてても、ここに来れば大丈夫。
僕には、いつでも帰れる場所がある。
瞼が重くなり、意識が遠のいていく。
最後に耳にしたのは、母上の優しい声だった。
「おやすみなさい、ユリウス」
少年は安らかな寝息を立て、幸せな夢の中へと沈んでいった。




