最終話 未来の光
――あれから、幾年かが過ぎた。
シャイン公爵邸の庭は、今日も子供たちの笑い声であふれていた。
セリシアとセオドア――今や「シャイン公爵夫妻」と呼ばれる私たちのもとには、三人の子供がいる。
長女は母に似てしっかり者、次女は父に似て研究好きで、末の長男はやんちゃ盛り。
三人が花壇のまわりをぐるぐると駆け回り、声をあげて笑っている。
そこに混じるのは、もう十二歳になったユリウスだった。
すらりと背が伸び、少年らしく成長した彼は、やんちゃな弟妹たちを庇いながら駆け回っている。
子グマの精霊もたくましくなり、まるで頼れる従者のように付き従っていた。
――ユリウスは今もヴァレンティン公爵家の嫡子。
けれど、母と過ごす時間も許されている。
レオニードとエリスティアがそれを認めてくれたからだ。
そのエリスティアも、今日は四人の子供たちを連れて遊びに来ていた。
ヴァレンティン公爵夫妻の間には、すでに賑やかな家庭が築かれていたのだ。
王女らしい気品を漂わせながらも、今も末っ子気質の甘えっ子ぶりは健在で、レオニードにぴたりと寄り添い、子供たちから「お母さまったら」と笑われていた。
「本当に……四人も子供がいるのに、あなたは相変わらずですね」
セリシアが呆れ半分に微笑むと、エリスティアは嬉しそうに笑った。
「だって、わたくし末っ子ですもの。レオニードさまに甘えるのは当然でしょう?」
「……その理屈、私には一生理解できそうにありませんわ」
二人で顔を見合わせ、声を立てて笑った。
かつて、政略結婚の犠牲となって出会った私たち。
互いに苦しみ、疑い合い、涙を流した時期もあった。
けれど、誤解を解き、心を重ね合った日から、私とエリスティアは「親友」と呼べる存在になった。
「セリシア」
エリスティアがそっと手を握ってきた。
「あなたが幸せになって、本当によかった。わたくし……ずっと、あなたには笑っていてほしかったの」
「エリス……」
胸が熱くなる。
「私もです。あなたとレオニードが笑っているのを見ていると、心から安心できます」
――私たちは、同じ苦しみを分かち合ったからこそ。
だから今、互いの幸せを誰よりも願えるのだ。
その横で、ユリウスと子供たちが歓声をあげて走り抜けていく。
白鹿とララ、成長した子グマ、そして黒猫スーが仲良く追いかけっこをしていた。
精霊たちの身体が光を帯び、庭いっぱいにきらめきが広がる。
「セリシア」
隣に立つセオドアが、そっと彼女の手を握った。
「ありがとう。……君がいてくれるから、僕は幸せだ」
セリシアは彼を見つめ返し、静かに微笑んだ。
「私も。もう二度と、自分の幸せを諦めません」
見渡せば、二つの公爵家の家族が笑い合い、子供たちが共に育ち、精霊たちが寄り添っている。
国は豊かになり、人々の笑顔も広がった。
――これこそが、私たちが求めていた未来。
未来の光に包まれて、物語は静かに幕を閉じる。
ここまでお読みいただきありがとうございました。
この物語は「切ないけれど、最後は必ずハッピーエンドにしたい」という思いで綴りました。
セリシアもレオニードもエリスティアも、それぞれの場所で幸せを見つけました。
読後に少しでも温かい気持ちを抱いていただけたなら、とても嬉しいです。




