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公爵の愛人に落とされても、黒猫精霊はいつもそばで守ってくれます  作者: 風谷 華


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第26話 王女の告白

 王女エリスティアの寝所は、夜の静寂に包まれていた。

 蝋燭の灯りが揺れ、壁に淡い影を落とす。

 これまでは減税の密談を交わす場でしかなかったその部屋が、今夜は妙に息苦しいほどの緊張を帯びている。


 レオニードは机に広げられた書類を片づけ、視線を向けた。

 エリスティアは寝間着姿のまま立ち、手を胸の前でぎゅっと握りしめていた。


 「殿下?」


 呼びかけると、彼女は小さく首を振った。

 「……今日は議論のためにお呼びしたのではありません」


 その声音は震えていたが、澄んだ瞳はまっすぐだった。

 胸の奥がざわめく。


 「わたくし、あなたに伝えたいことがあります」

 彼女は深く息を吸い込み、はっきりと告げた。


 「……わたくし、あなたが好きです。――夫としてではなく、一人の男性として」


 蝋燭の炎がふっと揺れた。

 部屋の空気が止まる。


 レオニードは息を呑んだ。

 「……なにを……?」


 想定していなかった言葉だった。

 困惑のあまり、思わず口にする。

 「だが……私はてっきり……あなたは護衛騎士のカイル殿を想っているのだと」


 エリスティアは一瞬目を伏せ、そして小さく笑った。

 「確かに、カイルは幼い頃からわたくしを守ってくれる大切な存在です。

 けれど……愛する男性は、あなたです」


 その真摯な言葉に、胸の奥で何かが音を立ててほどけていく。


 セリシアを愛していた気持ちは消えない。

 彼女は自分のすべてだった。

 だが、彼女はもう別の未来を選んだ。


 そして目の前にいるこの女性――王女エリスティアは、ずっと国と人のために共に戦い、支え合ってきた。

 その瞳は今、迷いなく自分を見つめている。


 「……エリス」

 初めて名前で呼ぶ。

 「私も……あなたと共に未来を歩みたい」


 エリスティアの瞳に涙が光り、唇が震えた。

 「……ありがとう」


 二人は自然と近づき、蝋燭の灯りに照らされながら唇を重ねる。

 形式だけの夫婦関係を越え、初めて真の夫婦として結ばれた。


 夜は静かに更けていく。

 やがて蝋燭の炎が消え、残されたのは互いの温もりだけだった。


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