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ようこそ神託カフェへ!!  作者: 幸・彦
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悔いぬ者の言葉

並んで仰ぐ空は、蒼かった。


================================


それで。

あなたは一体、何が言いたいの?

このあたしに。


言いたい事は色々ある。

知ってる事もね。


…レンネの事?


そんな些事じゃない。

たとえば、ピアズリム学園の学園祭を魔獣人に襲わせた事とかよ。


………………まさかあなた。

あの時の屋上の女なの?


え?

ああ、違う違う。彼女の事はよおく知ってるけど、本人じゃないよ。

その時の事もそこそこ聞いた。


…本当に、断罪する気じゃないの?

そこまで知っていて流すってのは、どう考えても腑に落ちない。

同情でもしてるの?


いいえ。

悪いけど、あたしはそういう同情をするような人間じゃないから。

さっきもチラッと言ってたけれど、あたしはここではよそ者だからね。

かじっただけの道徳を振りかざして誰かを裁くなんて、ガラじゃない。


だったら、どうしてそれを…


知ってるって言ってるだけよ。

喋る鳥を眷属にできるってだけじゃない、ウルスケス・ヘイリーをね。

知らないで偉そうに語られるより、その方がよっぽどいいでしょ?


それは…

まあ

そうだけど。


だったらちょっと聞いてよ。

あたしの話をね。


================================


………………

え?

う、嘘でしょ?


残念ながら、どっちも本当の話。

まあ、この鳥のあたしじゃなくて、本体のやった事だけどね。


両方とも、あなたが…?


そのとおり。

ピアズリム学園に放った魔獣人も、ネイルが量産した魔鎧屍兵軍団も。

どっちもあたしが叩き潰した。


…もう一回だけ訊くけど。

嘘じゃないんだよね?


こんな馬鹿げた嘘はつかない。

信じる信じないは勝手だけど。


分かった。

もうここまで来たら、信じるよ。

そもそもそこまで具体的に知ってるなら、むしろ疑う方が難しいし。


話が早くて助かるよ。


だけど、じゃあひとつ訊かせてよ。


うん?


そこまで圧倒的な力を持っているのなら、今回の拉致監禁の解決なんて

片手間で楽勝だったんじゃないの?どうしてあたしの助力なんか…


そんな事はないよ。

確かに、ただ殲滅すればいいというだけなら苦もなかった。それは別に

否定しない。だけど「助け出す」となれば、話は全然違ってくるのよ。


そんなに違わないと思うけど…


何度も経験したから分かるのよ。

力ずくではどうにもならない事は、どんなに万能になろうと起こる。

あたしがどれほど強かろうと、その時は誰かを頼る。そういうものよ。


………………


完全に理解しろ、なんて言わない。いや、出来るとも思ってない。

まあ、信じてくれれば嬉しい限り。


分かった。


その上で、確かめたい事がある。

あなた自身の未来をね。


…未来?


ここに来たのは、何か明確な目的があっての事なの?


いいえ。

オレグストとミクエが、今の情勢を知るために赴いたってだけ。

…あたしはどうでもよかったから、すぐ近くの街で待ってた。


そっか、なるほどね。

じゃあ偶然だったって事なのね。


何が?


この街には、【リセット】の天恵を持つ人間がいる。

ひょっとすると、それが目的かもと思うのは無理もない話でしょ?


…リセットって何?


読んで字のごとくよ。

特定の相手の天恵を、宣告前の状態まで戻す事ができるって天恵。

その事を知っていて、自分の天恵をリセットしようと思ったかなって。

まあ、単純な推測よ。


………………………………

……………………… 

見損なわれたもんね。

つまりこのあたしが、自分の天恵をなかった事にしたいと思ってたと。

どこまでも心外ね。

本気でそう思ったの?


可能性があったってだけの話よ。

はっきり言って、あたしはあなたがどんな人間かを知らない。今までに

何をしたかじゃなく、どんな性格をしているかをね。だからこの街での

邂逅には疑いを持つって事。

で、結局どうなの?


つまり。

そのリセットって天恵を、あたしが望むかって質問なの?


そう。

真面目に訊いてる。

実を言うと、あたしは彼女に貸しがある。多分いう事も聞いてくれる。

あなたの事についても、頼めるよ。



どうする?


================================

================================


………………


いらない。

申し出には感謝するけど、あたしは自分の得た天恵を否定したくない。

やってきた事を後悔する気もない。いや、しちゃいけないと思ってる。


そう思うんだ、本気で。


ええ。

今さら隠す気はない。

あたしはこの天恵で、今まで何度も取り返しのつかない事をしてきた。

家族さえ死なせた。それらの事実はもう、あたしの一部になっている。

あなたに断罪の意志が無いのなら、わざわざ自分の罪を償う気もない。

天恵を得て成した事は、何もかもが自己責任。そう信じているから。


だから、なかった事にはしないと?


ええ、その通り。

誰かに断罪される気はない。だけどなかった事には絶対に出来ない。

リセットなんて許されるわけない。それは決して、時を戻すって事じゃ

ないんだから。

身勝手だと言われようと、あたしは自分の過去を悔いない。忘れない。

何もかも認めた上で開き直るだけ。それがあたしの生き方。

文句ある?


ないよ。

むしろ痛快だよ。

つまんない言い訳を並べ立てる輩に比べれば、その生き方は好きだよ。

あたしには天恵という概念は完全に理解する事ができない。それでも、

それぞれがどう向き合っているかは分かる。正解は人の数だけある。

悔いを残さないってのはいい事よ。あたしも拓美もそうしてきたから。


タクミって?


あたしの昔の相棒よ。

多分、あなたとはそれなりに仲良くなれただろうなと思う。

紹介できないのが残念だけどね。


そっか。

確かにちょっと残念かもね。


ありがとうね、ウルスケス。

ちゃんと答えてくれて。


…お礼を言われる事なの?


気になってたからさ。

あなた自身の言葉で、これから先を語ってくれたのは嬉しかったよ。

認めない人は、多いかも知れない。だけど信じる道を行けばいい。

少なくとも、あたしはそれについてもうあれこれ言ったりはしない。

ディナたちを助ける、手助けをしてくれた今のあなたを信じる。


ありがと。

タカネさん。



それじゃ、あたしはもう行くね。

危なっかしい連中を見守らないと。

元気でね、ウルスケス。


ええ。

またいつか、機会があれば。


そうね。



んじゃ、お先に!!


================================


羽ばたく空は、どこまでも高く蒼く晴れ渡っていた。

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