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ようこそ神託カフェへ!!  作者: 幸・彦
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それは過去語りにあらず

「…つまり、二階堂さんの甥っ子が異世界に転生したと?」

「そう。」

「ええぇー…」


あたしたち三人は、等しく返す言葉に窮していた。


================================


なぜ彼女の世界、あえて名を付けるなら「ローナ時空」にタカネという

イレギュラーがまぎれ込んだのか。その辺は大いに興味があった。で、

もうあれこれ推測せずローナ自身に説明を求めた。…って事で、結果。

予想よりかなりとんでもない経緯を聞く羽目になったってワケだ。


荒野友樹くん。


オルラこと二階堂さんの実妹である純さんの息子で、その当時中学生。

それが交通事故で異世界に転生し、転移先の神・ローナの知るところと

なったらしい。あたしたちが地球を発ってからもう90年経ってるから

何気に経過時間がバグってるように思うけど、それは異世界あるあると

言ってもいい事象なんだそうな。


「あたしは己の世界の過去や未来を見る事は許されてないけど、他の

世界であればその制約はない。まあそれでも限界はあるんだけどね。」


事もなげに語る内容が凄い。つまり彼女なら、あたしたちの未来とかも

容易く覗けるって事になる。うわぁ確かに神様って感じだね。じゃあ、

怖いもの見たさでちょっと未来を…


「言っとくけど、あなたたち自身の未来についての話なんか出来ない。

そこはしっかり踏まえといてね。」

「え?」


バッチリ見透かされていた。いや、何でそこまで断言するの?だって、

見ようと思えば見えるんじゃ…?


「もう既に、経験したから言える話なんだけどね。」


そう言ったローナの口調が、ほんのちょっとあらたまった。いやはや、

メールを音声で読み上げてるだけのアバターなのに、リアルだよなあ。

よほどタカネがキャラクター構築に手間をかけたって事なんだろうか…

って、今はそんな事考えてないで、話に集中しよう。…で、どうして?


「もしPCで覗くだけだったなら、現在過去未来いつでも自由自在に

覗けたんだろうと思う。だけど今、あたしはこうしてあなたたちという

存在にアプローチを果たした。ならもう、今この場からのあなたたちの

未来はあたし込みの未定になった。だから多分、もう未来を覗く事自体

出来なくなってるだろうと思う。」

「…………………………」


うーん…まあ、内容そのものは割としっかり理解できる。要するに、

タイムパラドックスに抵触するかも知れないから危ないんだろう。

いくら神様でも、そんな些細な理由で世界を崩壊させる…なんてのは

NGだろうからね。


いやはや、興味は尽きないなあ。

まあそれはさて置き。


相互時間がバグってるのは忘れるとして、とにかくその友樹くんという

異世界人が全てのきっかけだった。いくつかの手違いから、友樹くんは

赤ん坊のまま過去の記憶を取り戻す羽目になった。んで、本人の希望で

元の世界に帰る事になった…という事らしい。


深く考えなくても分かる。

かつての二階堂さん、つまり彼からすればおばさんとほぼ同じ流れだ。

聞いた限りでは、事故の瞬間に戻る予定なんだとか。その点でも完全に

オルラ・ベステュラを踏襲してる。何と言うか、血は争えないなあ。


「なるほど、参考になるよ。」


え?


あれやこれや語ったら、思いのほかローナが感慨深げにそう言った。

何がどう参考になるんだろうか?


「やっぱり、その環って女性の顛末を詳しく知ってる人から聞きたいと

思ってたからね。このあたり、ただ覗き見するだけじゃ難しいから。」

「ああ、なるほど…。」


このあたり、やっぱりローナ的にも探り探りな部分なんだろうね。

とすれば、あたしたち三人と関わる機会もあまり多く持てないだろう。

どこにどんなパラドックスがあるか分かったもんじゃないし。


だけど、貴重な機会には違いない。あたしたちにとってもね。


とことん聞こう。どうせヒマだし!


================================


それにしてもビックリだ。

純さんが、向こうの世界のあたしの叔父さんにあたる人と結婚とは…

って、そっちじゃない!いやそれもビックリには違いないんだけどさ。


タカネが転生についていった方法の話だ。実にぶっ飛んでるなあ。

まさか赤ちゃんだった友樹くんの、記憶の中に潜んでいったとは…!


「まあ、あたしが見つけなかったら実行される事はなかったけどね。」


若干ドヤりながらローナが言った。何だ、そのタカネっぽい雰囲気は。


「何たって、あたしの世界ではまだコンピューターなんて無いし。」

「でしょうね。」


それは店の内装を見れば分かるよ。まだそのレベルじゃないって事は。

この神様って、何気にオーパーツを気安く使ってるんだなあ。いいの?

…いいんだろうなあ、うん。


とにかく奇跡的な強運(?)によりタカネは無事に実体化を果たした。

仕込みにはあのミロスも絡んでいたらしい。さすがだなあ、あの子も。


「んで、タカネが首尾よく友樹くんを送り返したって寸法ですか。」

「まだまだ。」

「「「えっ?」」」


あたしたち三人の声がハモッた。

え?

まだ終わってなかったの?


「さっきも言ったけど、自分の世界の未来は見る事は出来ない。んで、

友樹の問題はバリバリ現在進行中。それも結構ハードな展開でね。」

「ええぇ…」


何だろう。

すっかりアフタートークを聞いてるつもりでいた。ホント、何でだろ。

あまりにもローナが、普通な感じで話していたからかも知れないなあ。


…急に不安になって来たよ。

そんなタイミングで、どうして彼女はメールをよこしたんだろうか。


…………………………



不安なんて、何年振りだろうなあ。

逆にちょっとワクワクするよ。

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