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ようこそ神託カフェへ!!  作者: 幸・彦
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後始末の方針

「マジかよ!?」


思わず声が裏返ってしまった。


今後の営業方針などを考えるため、モリエナを交えての話し合いの場を

設けた。…今にして思えば、何とも呑気な話である。

やって来たモリエナは、店であった事を実に何気ない口調で報告した。

内容のヤバさとのギャップで、俺もネミルもしばし頭が混乱した。

いや、ローナでさえ絶句していた。まさかそんな事が…って話である。


「タカネは知ってたのか!?」

「いや、分体からの連絡はもらってなかった。まあ、自分たちだけでも

返り討ちに出来るって確信があったからだと思うよ。」

「そんなんでいいのかよ…」


よりによってゲイズとシャドルチェの二人。俺たちの知る限りでは、

最強最悪と言ってもいい組み合わせだろう。それが店に来たってのは

悪い冗談だ。しかもシャドルチェの目的がこの俺だったらしい。いや、

ホント何でなんだよ。



みんな、無事で本当に良かった。


================================


「ケールソンさんを差し向けたのはオレグストさんです。」


告げるモリエナの口調には、迷いや疑いの響きはなかった。つまり、

直接記憶を覗いて得た情報って事になるんだろう。…無茶をするなぁ。

しかし、タカネの分体が協力したという事なら、もう何も言うまい。

それなりにリスクも承知の上だっただろうからな。


「シャドルチェが直接命令したって訳じゃなかったんだな。」

「ええ。」

「どうしてそんな事に…?」


ネミルの疑問はもっともだ。いや、俺としてもシャドルチェがそこまで

執着するというのはピンと来ない。確かに逮捕のきっかけになったけど

ハッキリ言って何を今さらだろう。あれからどんだけ経ってるんだよ。

ゲイズが随行していた事に関してはもう、事実として認めるしかない。

つくづく、店に分体のタカネがいてよかったと思うばかりだ。


待てよ。

送り込んだのがオレグストなんだとすれば…


「もしかして、前に【魔王】の力を使ってあいつの記憶を改竄したのが

バレたのか。」

「え…今頃?」

「そんな事あったの?」


俺とネミルの言葉に、じっと聞いていたローナも興味深げに割り込む。

そう言えばあの頃は、まだポーニーしか店にはいなかったんだっけか。

思えばずいぶん、時間が経ったな。まあ、感慨に耽るのはまた今度だ。


「あの時点では、オレグストもまだロナモロス教には入ってなかった。

滅多な事で【魔王】の効果が切れるとは考えられないけど、【洗脳】の

天恵をそういう形で応用したなら…あり得なくはないだろうな。」


言いながら、確信めいたものが胸に宿るのを感じた。

オレグストが国を出たのは、もはや周知の事実だ。モリエナの共転移が

失われている以上、ロナモロス教の人間がイグリセに戻るのはかなりの

リスクを伴う。それを踏まえた上で来たのならば、片方の目的だけでは

弱い。…とすればやはり、二人分の復讐を背負ってきたって事だろう。


で、そこにいたのがこの俺じゃなくランドレとモリエナ、ペイズドさん

だったって事か。どんな巡り合わせなんだか。


「だけど、そこまで露見したのなら危険じゃない?お店が…」

「それはどうでしょうね。」


不安げなネミルの問いに、モリエナが即答した。


「あたしの知る限り、今回襲来した二人はロナモロス教のツートップと

言ってもいい実力者です。共転移で得た記憶だけではオレグストさんの

意図までは拾えませんでしたけど、あくまでも個人的理由からの襲撃と

考えられますから。」

「つまり、全勢力を注ぎ込むような話じゃないって事か。」

「断言はできませんが、おそらくはそうだと。」

「うーん…」


心当たりは乏しいものの、どっちも因縁があるって事は否定できない。

リスクを承知で俺の店まで行ったと言うなら、確かに第二陣・第三陣が

向かうとは考えにくいだろう。


何と言っても、今のロナモロス教の目的はヤマン共和国での騒乱だ。

いささか乱暴ではあるけど、これはもう割り切ろう。



我ながら、動じなくなったなあ。


================================


「と言うわけで。」


そこで言葉を挟んだのは、それまで黙って聞いていたタカネだった。


「間違いなくゲイズはエルヴォロノ火山に沈んだ。確認したよ。」

「出来るんだ、確認…」


呆れたようにネミルが呟く。ホントつくづく万能だよなあ彼女。

あれ?でも彼女の分体って確か…


「モリエナの補助をしてた分体は、転移での回収が出来ない。つまり、

自力で帰るしかないって事ね。」

「ええー…」

「すみません、本当に。」


恐縮するモリエナに対し、タカネはフッと笑った。


「いいよいいよ。元々そのつもりでいたんだからさ。」

「でも…」

「せっかくだから、ちょっと寄り道してから合流しようと思ってね。」


「寄り道?」


気になるそのひと言に、俺は当然の疑問をぶつけた。


「どこ行くんだよ。」

「聖都グレニカン。」


「え!?」


俺とネミルとモリエナの声が、見事に重なる。



…何だって?

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