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ようこそ神託カフェへ!!  作者: 幸・彦
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何はともあれ朝食

状況は割と単純だ。

要するに知人が来店したってだけ。二人ずつの二組。

どっちもかなり印象深いけど、まあここにいる事にそれほど深い疑問は

抱かない。旅行か何かかな?程度。


だけど、一緒にいるのはあまりにも理解に苦しむ。



どういう事情だ一体?


================================


「あー、お久し振りです!!」


真っ先に駆け寄ってきたのは、以前店に来た「ネクロス」の少女だ。

確か名前は…ケイナだったっけか。元気そうで何よりだ。


「いらっしゃいませ!」

「お久し振りです。」


並んで挨拶する俺たちに、ケイナはぺこりと頭を下げた。あの時と違い

ずいぶんと明るい服を着てるなあ。まあ、事情が変わったんだろう。

少し遅れて連れの男性も来た。彼の方がむしろはっきりと憶えてるな。

名前はサトキン。右目の横にある、小さな丸いタトゥーが印象深い。

こっちはケイナほど垢抜けてない。服の色調が前と同じく暗い。ただ、

あの怪しさ全開のローブは卒業したらしい。…けっこうオシャレだな。


「どうもご無沙汰しております。」

「お元気そうで。」

「その節はお世話になりました。」


言い交わし、俺とサトキンはフッと小さく笑い合った。

「お世話をした」のかどうかは甚だ疑問だ。…どっちかと言うと、俺は

開き直って浅い持論をぶつけただけだったから。

だけど今こうして会った感じでは、どうやら悪くはなかったらしい。

閉鎖された村に住んでいた彼らが、こんな遠い場所にいるってだけでも

変化があったって証しだろうから。うん、実にいい事だと思う。


ただし。



同伴者が意味不明なのを除いて。


================================


「おはようございます。」

「先日はどうも。」

「えっ!?」


少し遅れて歩み寄った連れの二人の言葉に、ケイナとサトキンが驚きの

表情を浮かべた。あ、やっぱりそのあたりは全く知らなかったのか…。


「お、お知り合いですか!?」

「え?あれ、あなたたちも?」

「ええー!?」


何だかちょっと温度が違うな。

ネクロスコンビはかなり驚いている反面、教皇女とアースロの二人は

割と落ち着いてるリアクションだ。やっぱり、世渡り歴の違いかな。

…いや、どっちにせよ一番困惑しているのは他でもない俺たちだよ。

どういう事情で同行してるんだか、さっぱり見えてこない。

でもまあ、ここはとりあえず…


「ご注文は?」


やっぱり、喫茶店に来たならこれが必須なんだよ。

うん。


================================


ぶっちゃけ、オロイクの街はお客の食いつきが悪い。何ならここまでで

一番悪いかも知れない。この傾向が朝だけなのかどうか、さすがにまだ

判断は出来ないけど。

という訳で、朝食を出した俺たちはキッチンカーを降りて一緒に座る。

四人ともかなり空腹だったらしく、貪るように食べている。何だろう、

妙な苦労とかしてそうな感じだな。まずはゆっくり腹を満たしてくれ。


サンドイッチもコーヒーもお代わりを出して、やっと食事は終わった。

その頃には、俺もネミルもほとんど困惑の感情からは抜け出していた。


まあいいじゃないか、彼らが一緒に行動しているとしても。少なくとも

悪い人たちじゃない。それは接した俺たち自身が、よおく知っている。

用もなしにこんな南の果ての街まで来るとは思えない。おそらくは海を

渡る気だ。もしかすると教皇女は、聖都グレニカンに帰る気なのかも。

ロナモロス教団の現状を鑑みれば、危ないからやめておけ…とばかりも

言えないしな。ふと目を向ければ、ネミルも教皇女をじっと見ている。

やっぱり、気になるのはそっちか。


とは言え、ここで会えたのも大きな機会だ。話はちゃんと聞こう。

どうやらローナはこの場に同席する気はないらしい。気配が消えてる。

…まあ、ネクロスコンビに会うのはさすがに気が引けるって事なのか。

あの時はポーニーの体を乗っ取って喋ってたけど、下手な事を言えば

大きなボロが出かねないからなぁ。


うん、俺たちとしても今は彼女にはいて欲しくない。変な意味じゃなく

普通に話をしたいって意味で。いやこれもかなり変な意味になるのか?

まあいいや。


今日までの何やかんやで、俺たちはこの国でも屈指の情報通になった。

ここが外国へ向かうための街という事実も踏まえて、彼ら四人に対して

あまり無責任な事は言えない。特に教皇女たち二人には。


「さて、それじゃあ…」


俺の言葉に、食後の一服を堪能していた四人が同時に向き直った。

もうその顔に、さっきまでのような困惑の色はない。俺たちと同じだ。

ま、腹が満たされれは誰でもそんな感じになるよ。商売柄、その事は

人よりも実感でよおく知っている。結果としては悪くないだろう。


「事情を聞きましょうか。」


俺の隣に座るネミルがそう言った。落ち着いたそのひと言に、四人も

揃って頷く。よし、じゃあ聞こう。


日はすっかり高くなり、通勤などの人通りも一段落しているらしい。



絶好のお話日和だな、本当に。

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