表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ようこそ神託カフェへ!!  作者: 幸・彦
396/597

友樹くんの憂鬱

運がいいのか悪いのか。

我が事ながらさっぱり分からない。


交通事故に遭って死んじゃって。

何の因果か異世界転生しちゃって。

赤ん坊のまま記憶が戻っちゃって。


そして今は、元の世界に戻る手段をみんなが探してくれている。


うーん…

やっぱりまだ、決めるのは早いか。

いいとも悪いとも言えるし。

さすがに、赤ん坊でいる事にも少し慣れてきたし。



そんなのに慣れるのは怖いけど。


================================


週二日のペースになったけど、僕は相変わらず喫茶店に預けられる。

ディナお母さんも、すっかりそんな生活パターンに馴染んじゃってる。

…いや、僕の事情ならむしろそれは有難いんだけどさ。

普通の赤ちゃんなら、あんまりいい事だとは思えないなあ。グレるぞ。


仕事優先も程々にしないとね。


================================


喫茶店で僕の世話をしてくれているのは、ペイズド・バスロさんだ。

元の世界のお父さんより年上なんだけど、こんなおかしな状況の僕にも

きっちり適応してくれている。まあ天恵なんてものが、普通に存在する

世界だからだろうね。機械越しではあるけど、会話できるのは有難い。


だけど、ここでも僕は歯痒い思いをする事になった。


================================


異世界転生。ミロスさんが聞いたら大喜びしそうなファクターである。

現在の境遇はさておき、貴重な体験をしているのは間違いない。無事に

戻れたら大いに体験を語りたいし、こっちの世界に爪痕も残したい。

だから現代日本のアレコレをここでお披露目!と思ってたんだけど…


「あるよそれ」


ペイズドさんは、僕の語るアレコレをことごとく潰していくのである。

そう。僕はこの異世界で、いわゆる知識マウントというのが取れない。

15歳の小僧が提示できるものは、大体この世界に存在するのである。


何でだよ、とはさすがに思わない。

文明レベルを見てみても、いわゆる中世ではない。電話があるあたり、

かなり進んでいる。地球で言えば、バリバリ20世紀だろう。とすれば

思いつくものは既に存在している。チェスもオセロも現物があるよ。

かと言って、テレビゲームにまではテクノロジーが届いていない。実に

歯痒い。己が不甲斐ない。


そしてもうひとつ。

この世界には「異界の知」とかいう概念が存在しており、誰かの天恵を

基盤にして異世界のテクノロジーが持ち込まれる。変速自転車なんかは

丸っきり現代日本のそれだ。お店のシステムキッチンも、下手をすると

日本の僕の家のより進んでそうだ。何だろう、この異様な異世界感は。


結局のところ、僕は知識面では何も自慢できる事がないらしい。正直、

かなり悲しい。せっかく異世界転生したというのに、ただの子供だよ。


だったら!

得意なオセロでマウントを取る!


というわけで、挑んでみました。


結果。


ペイズドさんにもランドレさんにもボロ負けしました。

モリエナさんとポーニーさんはその結果を見て、不戦敗でいいよと。

気を遣われたんだろうなあ。


…………………………


悲しい。


ここの人たちは優しいけど。

やっぱり早く帰りたい。

多少痛い思いをする事になっても。

向こうに帰りたい。



頑張って下さい、タカネさん!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ