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ようこそ神託カフェへ!!  作者: 幸・彦
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ローナの思惑

「じゃ、明日から教室再会ですか。さすがにタフですね。」

『まあ、ロンデルンに滞在していた間は遊んでたようなもんだしね。』

「無事にお戻りなら何よりです。」

『あの騎士のシュリオさんって人、もしかして知り合い?』

「店にある鎧の元の持ち主です。」

『マジで!?へぇそうだったんだ。面白い思い出になったよ。』

「それじゃ、俺たちもそろそろ出発しますんで。」

『どこ行くの?』

「南下します。」

『くれぐれも気を付けてね。』

「了解です。んじゃ、また。」


そこで電話を切った俺は、ため息をついた。長距離は金かかるなあ。

ここは街道沿いにある大きなホテルのロビーだ。電話があったので、

とりあえずニロアナさん宅に連絡を入れてみた。心配するほどもなく、

ちゃんと帰宅していた。どうやら、ネイルたちは潔く諦めたらしいな。

まあ、イララがあれだけあっさりと捕縛されたんだら、無理もないか。


今さら家まで押し掛けるというのは考えられない。追われているなら、

そこまでリスクは冒さないだろう。それに、リマスさんの情報によると

あのシャドルチェがロナモロス教の手に落ちている。御し切れるのかは

分からないけど、少なくともあの女の天恵が得られたなら、もう今さら

【読心】が必要になるとはあんまり思えない。【洗脳】で事足りる。


ひとまず、ニロアナさんに関しての懸念は消えたと見ていいだろう。

かなり引っ掛かりは残るけど。



やれやれ。


================================


『それで、次はどこ行くの?』


オラクモービルに戻ると、タカネがそんな質問を投げかけてきた。

地図を調べていたらしいネミルも、その問いに呼応して振り返る。


「ロンデルンを抜けるのが予想より早かったから、未定だったよね。」

「そうだな。」


運転席のシートに座り直した俺は、ネミルに渡された地図を見て呟く。


「まあ、とりあえず南下も半分以上の道のりを来てるんだけど…」

「何となくだけど、のんびりし過ぎって気がしてきてるわね。」

「………………確かにな。」


後ろの窓から覗き込むローナのそのひと言に、俺は反論できなかった。


それは、単に移動スピードだけの話じゃない。

行く先行く先で妙な騒動が起こる。いちいち関わっていては、俺たちの

本来の目的に近づけない。もちろんそれなりに情報や手掛かりなんかは

得られているものの、あれやこれやリスクが増えているのも事実だ。


「ロンデルンは抜けたし、ネイルと教団の連中が海を渡るっていうのも

ほぼ確定だ。ならもう、スピードを上げて一気に南下する方がいいな。

どう思う?」

「うん、いいんじゃない?」

『確かにその方がいいのかもね。』

「…………………………」


俺の意見に対し、ネミルとタカネは賛同の意を示してくれた。一方で、

ローナは黙りこくっている。何だ?異論があるなら言ってくれないと…


『どうしたのローナ?』

「え?…ああいや、ちょっとね。」

「ちょっと何だよ。」


恵神に言葉を濁されると、妙な不安ばかりが頭をもたげるんだよ。

何かの懸念があるっていうのなら、早めに言っといて欲しい。


「いやそういう訳じゃない。むしろその逆よ。」

「逆?」

「もしかすると、何か手掛かりでも掴んだんですか?」

「確かな事はまだ言えない。」


勢いづくネミルにそう答え、ローナはちょっと視線を泳がせた。

しばしの沈黙ののち。


「あたしはいったんオラクレールに戻る。」

「え?」

「タカネが得た情報を、向こうにもきっちり伝えないとマズいからね。

それに…」

「それに何だよ。」

「向こうでしか出来ない事がある。とりあえずあたしに任せといて。」

「…大丈夫だろうな?」

「もちろん。」


即答したローナが、ニッと笑った。


「あんたも知ってるでしょ?」

「何を。」

「向こうの連中だって、それなりに難局を乗り越えてきてるって事を。

ここまで来たんだし、もうちょっと強気で攻めてもいいってね。」

「…………………………」


軽々しく同意していいのか、非常に迷うところだ。

戦闘に長けているのがこの場にいるタカネだけ、という現実はしっかり

憶えておくべきだろう。その部分を軽んじると、思わぬ危機を招く。

一方で、確かにポーニーたちだって場数を踏んでいる事も分かってる。

店を任せた以上、あんまりこっちで気を揉んでいても仕方ないだろう。


ローナの言う「強気の攻め」が何を意味するのかは分からない。でも、

今になってあまり無謀な事はしないだろうなと思う。思える程度には、

ローナとも腹を割って話している。どういう奴なのかも分かっている。


…………………………

よし。


信じてみるとするか。


================================


「それじゃあ、一気にオロイクまで行く事にする。いいな?」

「いいよ。」

『とりあえずガソリン入れて。』

「はい。」


最南端にある古都市・オロイク。

モリエナの話によると、去年まではロナモロス教の本拠地だった街だ。

もちろん今はもう引き払われているだろうが、それでも探せば何かしら

手がかりはあるかも知れない。仮に何にもなかったとしても、そこから

港街まではすぐだ。最後に立ち寄る場所としては悪くないだろう。


「寄り道しなければ、車中泊挟んで二日あれば行けるだろうな。」

「分かった。こっちもそのつもりで動くから。」


ローナがそう言って大きく頷いた。どうやら、ここで店に戻るらしい。


「明日か、遅くともあと四日くらいあれば結果が出せる。」

「よし。少なくとも俺たちは、その結果とやらが出るまでは国に留まる

つもりでいる。頼んだぜ?」

「了解。」

「くれぐれも無理だけはしないで。お願いしますね?」

「了解ですネミルさん。んじゃ!」


シュン!


わざとらしい敬礼をしたローナが、一瞬で掻き消える。

しょっちゅう帰ってはいたけれど、今回は多分かなり特殊なんだろう。

手を出せない以上、何をする気かは深く訊かなかった。それでいい。

後は信じるだけだ。


「まずはオロイク。そこから先は、本当にローナたち次第だな。」

『ま、信じてみましょう。』

「んじゃ出発!」


ネミルの号令で、オラクモービルはゆっくりと走り出した。


ずいぶん遠くまで来たもんだけど、もうすぐこのまま海を越える。

今までとは違う覚悟と決意をもって臨まないと、多分しんどいぞ。


望むところだ。



さあ、頼むぜローナたち!

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