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ようこそ神託カフェへ!!  作者: 幸・彦
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リマスの目の前に

「え?…何ですって?」

「またタレコミだよ。しかも今回はこの首都でだ。」


ゲルノヤ隊長の口調は厳しかった。


「…今回はって事は、以前のアレと同じ人物からですか。」

「どこからかがまったく掴めない。しかし、掴めないという事実自体が

見事に一致するんだ。ほぼ間違いはないだろう。」

「分かりました。」


ほぼ間違いない。その言葉に思わず背筋が伸びた。

先ごろ、シュリオの実家に居候する事になった教皇女の許を訪ねた際。

謎の通報によって、ロナモロス教団の実動要員だった女を確保できた。

正確に言うと、その遺体の回収が。【氷の爪】という危険な天恵を持つ

暗殺者であり、ニセモノの教皇女を殺害した張本人でもあった。


誰からの通報だったのかは、今なお不明だ。女性だった、という事しか

判っていない。結果的には、遺体がゲイズ・マイヤールという人物だと

いうところまでは調査で判明した。ロナモロス教団がどれほど危険かを

知る上で、非常に貴重な通報だったのは確かだ。


それが再び来たらしい。

しかも今回は、今朝起きたばかりの猟奇殺人の犯人についての情報だ。

聞いた感じ、生きているらしい。



なら急ぐしかない!


================================

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何なのよあなたは。

やる気あるのかないのか、はっきりさせなさいよ!


ずいぶんご立腹ね。

そんなにあたしが手抜きをしているように見えるの?


とぼけんなよ。

こちとら、何度も何度も殺し合いをやってきてるんだよ。

相手の気構えくらいすぐ判る。このあたしをなめるんじゃない!


ああ、そう。

そりゃ悪かったわね。

まあ、考えようによっちゃ手抜きと言われても仕方ないからね。


ふざけやがって…!



分かった。

んじゃ、決着つけようかイララ。


================================


目指すのは、ホテル・マルニフト。

王立図書館の落成式に招待された、ゲストたちが泊まっている場所だ。


…どうしてまた、そんなところに?

いや、疑問に思うのは後でいい。

とにかく今は、その犯人がいるなら確保する。間違いなく天恵持ちだ。

油断せず臨む。メンバーはあたしとシュリオ、それにドラーエ先輩。

騎士隊の中で見れば、かなり戦闘に特化している面子だ。


「…前の時は、誰の姿も見てないんだったよな?」

「そうです。」


ドラーエ先輩に答えつつ、あたしはあの時の状況を思い起こしていた。

ココノロ病院の新棟に、ゲイズの骸があった。先に警察が来てたけど、

お手上げ状態だった。話によると、動かす事が出来なかったらしい。

だけどあたしが到着した途端、その面倒な状況はあっさり瓦解した。

まるで、このあたしを待ってたかのように。


誰の意志かは判らない。でも多分、真っ向から敵対する相手じゃない。

状況から考えて、ロナモロス教団に与するような存在でもないはずだ。


今もなお、自問は続いている。

ゲイズを倒したのは、一体誰か。

そして今、予感めいたものがある。



きっとその答えが、目指す先にあるという予感が。


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来い、イララ・イグア。

あたしの喉笛、掻き切ってみな。


…………………………


やめとくわ。

何と言うか、挑発が安過ぎる。

乗った瞬間、ろくでもない事になる気がするし。

んじゃね、タカネ。


あら。

さすがにもう、茶番は続かないか。慣れない事はするもんじゃないね。

ま、だからって結果は変わらない。


逃がすか。


粘糸弾掃射(ギルクガトリング)!」


================================


「油断するなよ二人とも。」

「了解です。」


ホテルまでは、ほんの数分だった。

敷地の外に車を停めて降り、物音を立てないように建物へと向かう。

見た限り、ホテルの中で何かしらの騒ぎが起きていそうな気配はない。

出る直前にも確認したけど、一般の回線に通報なども来ていなかった。


「…とりあえず、静かですね。」

「下手に名乗って入ると騒がれる。まずは外の状況を確認するぞ。」

「はい!」


ドラーエ先輩の指示で分散。周囲の状況に目を配る。聞いた限りでは、

通報者もしくはその仲間が足止めをしているような話だったらしい。

あんな猟奇殺人をやらかした相手を足止めって、一体どうやって…


チカッ!


油断なく周囲を見回す視界の隅に、小さな光みたいなものが映った。

頭上だ。見上げて目を凝らし、また同時に集中して耳を澄ます。


見た瞬間に確信した。

あたしが目にしたのは、戦いの光に違いないと。

おそらくゲイズの時と同じように、何かを知る者が戦っていると…


刹那。


ガサッ!!


目の前の植え込みに、真上から落下してきたと思しき何かが落ちた。

あやうく転びそうになったものの、どうにか踏みこたえる。


何だ一体?


「………ちっきしょおぉ!!」


人間だ。

落ちてきたのは、白い粘着性物質に絡め取られた女だったらしい。

身動きもできない状態で、ただただ喚き散らかしている。よく見ると、

その身体には獣化の形跡があった。…つまり、そういう天恵持ちか。

それを丸ごと絡め取って、そのまま空から地面に落とす?


前の時とは違う意味で、常識というものが通用しない事態らしい。

とにかく合図を送り、ドラーエ先輩とシュリオを待つ。

なおもジタバタと暴れる女の姿は、何となく絡め取られた昆虫に近い。


とりあえず…

こいつが今日の犯人なのだろうか?



夜の闇も、疑問も深かった。

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