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ようこそ神託カフェへ!!  作者: 幸・彦
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目指す理由は色々と

翌朝は、まだ薄暗い内に起床した。

さすがにネミルは眠そうだけれど、まあ我慢してくれ。


もうこのオトノの街も3日目か…と感慨に耽る間もほとんどなかった。

実際のところ、商売をしたのは1日だけだったし。


もちろん、お祭りが1日だけという話じゃない。この時期は特に期間が

長く、確か1週間ほど続くはずだ。もちろん、全日で出店するといった

選択肢もあった。さすがにそこまで粘る気は、最初から無かったけど。


でもその一方、わずか1日で見切りをつけたのもちょっと想定外だ。

と言っても、別に商売の場所として不満があったからじゃない。いや、

ただ商売するだけなら割と好条件なスペースだったとさえ思う。なら、

どうしてこんなに移動を急ぐのか。



次の目的地が定まったから。それに尽きる。


================================


「正直、ここはあんまり期待できる場所じゃないと思う。」


丸一日接客したローナの感想には、抗い難い説得力があった。

もちろん俺たちもせっせと働いた。それなりに繁盛もしていただろう。

ここで言うところの「期待」というのは、稼げるか否かの話じゃない。

ここで観察していて、ロナモロスに関する何かを掴めるかって話だ。

俺たちの目的はあくまで、ネイル・コールデンの捕捉と交渉である。

いくら人出が多いと言っても、その手がかりがないのではここに留まる

意味がない。スパッと切り替えて、何かしら次の手を打つべきだろう。


そこで昨日のロナンの来店だ。

もちろん、本人に他意などない事はすぐに分かる。ただ単に、俺たちが

学園祭で出店すれば面白いかも?と考えたんだろう。アイディア的にも

なかなか面白い。


それにもうひとつ。

何のかんのと言っても、ピアズリム学園には大きなヒントがある。

かつて生徒だったウルスケスには、明らかに危険な天恵が目覚めた。

その後の彼女の動向については全く追えてはいないけど、それは別に

サボっていたからとかじゃない。

ローナの言葉を借りるなら、彼女の歩む道も天恵の在り方のひとつだ。

明確な理由が無いのなら、あれこれ干渉する筋合いはない。だからこそ

あれ以降追わなかったって事だ。


だけどあの頃から、俺たちとしても事情が色々と変わってきている。

トモキを元の世界に帰すという最終目標がある以上、彼を帰すために

絶対に必要なネイル・コールデン。その彼女はロナモロス教の副教主を

務めている。昨今のロナモロス教の現状を考えれば、会うのはきわめて

難しいだろう。いやそれより前に、「ロナモロスの現状」ってものを

ちゃんと知らないと話にならない。


そういう意味で色々と思い返せば、あの学校には天恵に関わる人たちが

それなりに存在している。その筆頭と呼べるのが、ウルスケスだろう。

彼女がロナモロスに関与していたというのは、もはや確信に近い。

とっくに学校を辞めているのは事実だけど、当たってみる価値はある。


何度も言うようだけど、漠然とした使命感とかなら余計なお世話だ。

だけど今は事情が違う。あの教団に関与しているのなら、誰であろうと

当たる意味がある。そこはローナも今さらとやかく言わないだろう。

勝手だと言われようと何だろうと、目的のためなら行動あるのみだ。


まして昨日、わざわざロナンが来て学園祭の情報を教えてくれたんだ。

まさに明日からというタイミングも含めて、何となく使命的なものさえ

感じられる。神が行けと命じているかのような…


って、さすがにそれはないか。神は一緒に仕事してるんだから。



ともあれ、今日はピアズリム学園を目指す事にする。


================================


トリシーさんたちには、昨日の内に「明日発つ」旨を伝えてある。

さすがに残念そうだったけど、別に嫌になったわけでも何でもない。

次はピアズリム学園に行きます…と伝えたら、割と喜んでくれた。


「いいねえ、その挑戦する姿勢は。俺たちも見習わなくちゃな。」

「今度あたしたちも行きましょう!なんか楽しみ!」


そんな言葉を交わすトリシーさんとルソナさんの姿が、眩しかった。

きっとこの人たちなら、学生相手の商売でも大ウケするだろうよ。


いい仕事して下さい、これからも。


================================


「じゃあ行くか。」


さすがにまだ誰もいない北催事場を出発し、オラクモービルはゆっくり

大通りへと向かう。こっちも現状はほぼほぼ無人だ。昼間の人通りが、

ちょっと想像できないくらいに。


さすがにピアズリム学園はちょっと遠い。店からここまで来るよりも、

もっと時間がかかるだろう。そこは最初から分かっている。だからこそ

ここまで早起きしたんだから。


どっちみち飛び入り参加だ。到着の時間なんて細かく決めても無駄。

とにかく着きさえすれば何とかなるだろうし、さすがに今回は1日で

さようならなんて展開は避けたい。経験を積むって意味も含めてね。

それにあそこには、ロナモロス教の衰退に関しても詳しい人がいる。

前とは違う意味で、会って話を聞くのも悪くないだろう。


ひと味違う期待を抱いて、俺たちはピアズリム学園を目指して走る。


そこに待つ、思いがけない戦いなど知る由もなく。



今日も晴れそうだった。

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