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ようこそ神託カフェへ!!  作者: 幸・彦
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少女とその伯父と

「ありがとうねネミルちゃん!」

「はぁい、またのお越しをー!」


口コミって、本当にあるんだな。


ここしばらく、天恵の宣告を受けに来るお客がポツポツ増えている。

大体が、そこそこお金持ってそうなマダムとかだ。必要に迫られてとか

そういうのではなく、単に好奇心で来てみた…という感じか。


そして大体、何とも派手さに欠ける天恵を聞いて帰っていく。とは言え

ガッカリする人はほとんどいない。「あらそうなんだ!」とか言って、

仲間内でワイワイ盛り上がった後で満足し帰っていく。…何と言うか、

本当に茶飲み話のネタとして見るというノリなんだろうな。


「ちょっと思ってたのと違うけど、これはこれでいいよね。」


神託師としての対応もこなれてきたネミルが、そう言って笑った。


「そうだな。まあ役に立たなくても自分の財産だ。すぐ忘れる人とかも

いるかも知れないな。」

「確かに。」


そんな事を言い交わす俺たちには、もう懸念らしい懸念はない。


突出した天恵の少なさは、この前の休日で嫌というほど分かった。

千人以上を見て、明らかに凄い!と思えた天恵はたったの一つだけ。

これが現状なら、そんなに心配する事はない。…と言うか、得た天恵を

どう使うかは完全なる自己責任だ。ぶっちゃけ、俺たちには関係ない。

少なくとも天恵の宣告が禁忌でない以上、責任を問われる理由もない。


お手頃価格の神託師がいる喫茶店。



いいじゃないか、別に。


================================


その日は、少し雲が出ていた。


いつもよりも客の総数は少なかったけど、途絶える時間もほぼ無い。

何だか、ちょっと眠くなってしまうような平坦な日だった。


チリリン。


玄関のベルを鳴らして、二人連れの客が入って来た。

中年男性と少女。おそらく初めての客だ。年齢的に見て、親子かな。


「いらっしゃいませー!」


眠気を払うかのような声でネミルが迎え、案内しようとする。


「どちらのお席がご希望ですか?」

「窓際で。」

「はーい!」


元気よく答えたネミルが、ちょうど空いていた窓際の4人掛け席へと

案内する。男性は手ぶらで、少女は何か大きな鞄を肩にかけていた。

見た限り、かなり重そうな感じだ。…何で親父の方が持たないんだろ?


「…大丈夫だったかい?ずいぶんと重そうだったけど。」

「ご心配なく伯父さん。お気遣い、どうもありがとう。」


席に着いた二人の会話を聞き、俺は自分の予想が外れていたと悟った。

親子じゃなくて、伯父と姪なのか。…パッと見じゃ判らないもんだな。


「ご注文は?」

「コーヒーを。」

「あたしはミルクティを。あと何か軽く摘まめるお菓子も下さい。」

「はーい!」


うん、変に勘繰るのはよそう。


気持ちを切り替え、俺はコーヒーを淹れる準備を始めた。


================================


その後は客も来ず、けだるい時間が流れる。二人の前に来ていた客も、

何だかダラダラと長居をしていた。する事のなくなった俺とネミルは、

小声で新しいメニューなどについてカウンター越しに話す。黙ってると

つい客の会話を聞いてしまうので、これもそこそこ客に配慮した時間の

つぶし方だった。


窓際の二人は、盛り上がらない会話を続けている。一問一答と言うか、

少女の態度がちょっと素っ気ない。…どういう意図でここに来たのか、

いまいち想像できない感じだった。


しばしの静寂ののち。


「あのう。」

「あ、はいはい!」


少女に呼ばれ、手持ち無沙汰だったネミルがテーブルに歩み寄った。


「お代わりですか?」

「いえ。ちょっとお願いが。」

「何でしょうか。」

「…あなた以外、全員このお店から出て行ってもらいたいんですが。」

「……え?」

「何だって?」


は?


ネミルも彼女の伯父も訝しげな顔になってたけど、それは俺も同じだ。

何だ、いきなり何を言い出すんだ?


「いえ、ちょっとそれは…」

「何を言い出すんだいランドレ。」

「ダメですか?」


ダメに決まってるだろうが。

って言うか、何がしたいんだ。

何も言わず、俺はネミルの背越しに二人を注意深く監視していた。


しばしの沈黙ののち。


「あれを。」

「……?」


「ランドレ」と伯父に呼ばれた少女が、窓の外の一点をそっと指さす。

俺を含めた視線が、通りの向かいにあるベンチに注がれた。そこには、

少女が傍らに置いているのと同型の鞄が置かれていた。やや小さいか?


「あれがどうしたんだ?」

「見ててね、伯父さん。」

「………………?」


そう言った少女が、指さしたのとは逆の手で何かを操作する。

刹那。


バアァァァン!!


「ぅえッ!!?」


いきなり、外の鞄が爆発した。

飛んできた土くれが窓ガラス外側に当たり、醜悪な模様を作り出す。

一瞬遅れて、外からは甲高い悲鳴が聞こえてきた。見た限りでは爆発に

巻き込まれた人はいない。しかし、外の混乱は嫌でも聞こえてくる。


「なっ…」

「ちなみに、こっちの鞄の中にある爆弾の威力はあの20倍です。」

「え?」

「は?」


俺とネミルの声が間抜けに重なる。

ちなみにって何だよ。

その鞄の中に爆弾があるのはもう、言うまでもない既定路線なのか?



いったい何がどうなってんだよ!

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